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スピンオフHEROES  作者: 羽葉世縋
5/9

1999年春

1999HEROES

『フィリアとネイコス』また不思議な曲を作ったものだ。

自分1人の教室で動画サイトを通してイヤホンで聴いている。アコースティックギターの暖かい音の中、寂しい雰囲気の声が聞こえる。

愛の神様であるフィリアと憎しみの神様ネイコスの話。フィリア役はゲンジャク、ネイコス役はゲンゲツかな。

フィリアは憎しみに飢え、ネイコスは愛に飢えた。


そんな話なんだろうなぁとはわかったけど、どうも意味のわからない部分が多い。

死ぬまで書き続けた血文字、降り注ぐ流星に触れてみれば冷たかったという話、地の底の死骸の巡り方。

そしてこれが最後の曲だという宣言。

ファンとしては最後の言葉だけは深く刺さった。


ゲンジャクはブログをやっていた。度々オカルトサイトに上がることがあるこのブログ。内容は未来予知が多かった。

しかし当たらないのが毎度のこと。ゲンジャク曰く既に起きたことだから仕方がないとのこと。

ファンだから見ているが、普段の日記をもっと増やしてくれる方が嬉しい。


「ノリト、何聴いてんだ?」

「やぁ、サンカ。ボクが好きなインディーズバンドって感じの曲だよ。」

「へー、聴いてみたいなぁ。」

「いいよ。イヤホン貸してあげる。」

「サンキュ。」

隣に椅子を持ってきて座る。イヤホンを片方渡すと取り付ける。

「でも今回の曲はなんだかよくわからない曲なんだよね。」

「ふぅん。まぁ、いいからいいから。」

再生を押すと、サンカは曲に聴き入った。そういえばサンカは音楽が好きなんだった。


サンカが目を閉じて聴いているから、その横顔をまじまじと見つめてしまう。

性別さえ違っていれば…

それでも、植物人間と龍のなり損ないなんだからどう運命が動いたって仕方ない。


「うーん。たしかに難しい曲だな。」

「でしょう?」

「あと、最後に同じ音の羅列があっただろ。」

「あったね。」

「あの部分は多分モールス信号だな。」

「モールス信号?」

「そう。『カンナザキ』って言ってる。地名かなにかだろうな。」

「へぇ…。」


今までの曲にも最後に妙な部分があったから聴いてもらった。するとサンカは『テンカイ』『ゲッカイ』『19990707』と言い当てた。


それがどういう意味を持つのかはわからない。けど、何かがあるんだろうという予感はあった。


「何度も聞いてるとクセになる曲だな。」

「あっ、わかる?サンカならきっとわかってくれるって信じてた!」

「じゃあ今度は俺が好きな曲を聴いてみてくれよ。」


ずっとこんな時間が続けばいいのにな。


これは1999年4月3日のことである。

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