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彼は執事くん エピローグ

セミの鳴き声と、室内の暑苦しさで目が覚めた。

ヤバいっ、今日は終業式なのに寝坊してしまった!



「美千代さんっおは……」


いつも台所にいるはずの美千代さんがいない。

そうだった……

美千代さんは昨日からお友達と旅行に行っているんだった。


明日からアルが帰って来るから気を使ってくれたのだ。



─────そう……

明日アルが9ヶ月ぶりに日本に帰って来る。

10日間、私はこの家でアルと一緒に過ごすことが出来るのだ……



お嬢様頑張って下さいね〜うぷぷっとイヤな笑い方をした美千代さんの顔を思い出した。


「もうっ美千代さんたらっ。」


帰って来るのは明日なのに、美千代さんのせいで妙に緊張してしまっていた。



とりあえず汗ばんだ体だけでもシャワーで流したい。

急いでパジャマを脱ぎ、シャワーの栓をひねったら思いのほか勢いが強くて頭っから被ってしまった。


どうしよう……

髪の毛を乾かしてるヒマなんてない……


なんか焦げくさい……

はっ!パン焼いてたんだった!!


バスタオルを巻いて慌てて台所へと向かう。

濡れた足のまま廊下を走ったもんだからツルっと滑って派手に転んでしまった。


「おしりが……いったーいっ。」




「アリスは全然成長してないな……」





えっ……この声は……



玄関の方を見るとアルが立っていた。

鍵……かけ忘れてた。


「アルっ?!明日じゃなかったっけ?」


久しぶりに見るアルは、身長が伸びて体格も幾分がっしりとしていて…

少年というより青年のような感じに近づいていた。


相変わらずカッコイイ……

どうしよう…顔を見ただけでドキドキしてきた。



「少しでも早くアリスに会いたかったから…それより……」

アルが真っ赤になりながら顔をそむけた。


「全部見えてるからどうにかしろ!」



ぜ…んぶ……?

体に巻いていたバスタオルがいつ間にか下へとずり落ちていた。


「きゃ───────っ!!アルのエッチ!」

「はぁ?俺のせいじゃねぇだろ!」






部屋で制服に着替えて下に降りたらアルが朝ごはんを作ってくれていた。


「時間がなかったから簡単なもんだけど、食う?」

半熟のハムエッグを焼いたパンで挟んであった。


「もちろんっ!」

久しぶりのアルのご飯、美味しくないわけがない。


アルは私の濡れた髪をドライヤーで乾かし、可愛く編み込んでくれた。

執事のいるこの生活ってやっぱり……


「楽ちんとか思ってんじゃねーぞ。」

うっ……バレてる。



「ねぇアルが今執事してるお屋敷ってご令嬢はいるの?」

「いるよ…アリスと同い年。容姿端麗、文武両道、品行方正。非の打ち所のない完璧なお嬢様が。」


が──────ん!

そんな完璧なお嬢様と一緒なんて…ヤバくない?


「だからつまらないんだ。やっぱりお嬢様は手がかからないと……」

隣の席に座ってコーヒーを飲んでいたアルが私を見ながら笑った。

久しぶりのアルの笑顔は破壊力がありすぎて……


「も、もう学校行かないとっ……」


慌てて立ったもんだからコップに入ってた野菜ジュースをひっくり返してしまった。


あろう事かアルにビッショリかかってしまった……



「ア〜リ〜ス〜っ…」

や、やばい……


「なにしてんだてめぇは!しばかれたいのか!!」



久しぶりにアルにメンチを切られて怖かった。






成長した私を見せるどころか、のっけから失敗しまくりの私を見せまくってしまった。


一年に一回、わずかな期間しか会えない恋人同士のラブラブな日々を想像していたのに……

相変わらずの二人の関係である。


まあ、私が成長してないから仕方ないのだけど。






学校から帰って来たらアルがいる。

そう思うだけで心が温かくなれた……



「行って来ます!なるべく早く帰って来るねっ。」

「ああ……アリス、ちょっと。」


アルが人差し指をクイクイっと曲げて私を呼ぶので近付いたら、チュっとキスをされてしまった。


こ、これは……!

恋人同士を通り越して新婚さんのお見送りみたいだっ!!

アルが目を細めて微笑みながら言った。




「行ってらっしゃい。」









あなたの帰る家はどんな家ですか?




そもそも家とはなんなのだろう……


いくら見た目が立派でも、中身がなければそれはただのハコではないだろうか?



私は大きなお屋敷でたくさんの人と一緒に育った。


それはそれで幸せだったのだけど、今私は、大切な人が私に残してくれた赤い屋根の小さな家に住んでいる。



子供なんていないのに、庭には小さな子供が遊ぶ遊具が置いてある。




家族と住むことなど叶わないのに


家族のために建てた家─────






私が帰る家はとても温かい。



だってこの家には愛情が満ちあふれているから。








「ただいまっ!」












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