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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
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-65話 前哨戦 ④-

 前方位からの剣戟が天使を襲う。

 その切っ先は12本分。

 光属性の最上位級神速の剣技で登録された“ネメシス・アーク”は、その名のとおり真円を描いて、対象者を襲う天罰だ。

 1撃当たりが垂直兜割りの重攻撃に相当し、それぞれが回避不可能な速度で打ち込まれる。

 ただし、この場でラージュだけが瞳術だけでカーマイケルの現在位置を捉えている。

 12本の剣戟が見せる攻撃外にある彼の姿を。


 天使の直上に彼はあった。

 浮遊魔法フライを通じて、全身をバネのように低姿勢に保ったまま、神名解放された魔剣に魔力を注ぎ込む。地上では、彼の幻影シャドーがネメシス・アーク最後の一撃を放ち終えた瞬間に剣技ソード・アーツ発動――超神速重突撃――“メテオバースト・ストライク”。


 十分に削られた天使のHPバーが、彼の特攻で一気に消滅したのをラージュは見ていた。

 目が覚めるような剣技だった。

 というか、最期の技は彼女の知らない技だ。

 そして、彼女は思い知らされる『私はまだ未熟だ』と。

「見事な技だった」

 カーマイケルに賛辞を贈る。

 男性に見下ろされるのも悪くないと思い始めた。

 カーマイケルは、ラージュに手を差し伸べて、

「先ほどは、蹴り飛ばして申し訳ない」


「気にするな! 私は今、すごくお前を気に入ったところだ」

 ラージュが胸の内を曝け出している。

 素直なところが彼女の長所だ。

「そ、そういうことなら」


「私は、お前に惚れてしまった! 結婚前提は重かろう、ど、どうだろうか...私を弟子にして」

 もじもじし始めたのを見て、

「断る!」

 即答、じわっと涙目になるラージュ。

「私は弟子を取れるほど磨いてはいないが、剣友として共に道を歩む同士であることを望む!」

 カーマイケルが言える精一杯の返事だ。

 傭兵団の総長代理もまだ、中途半端である。

「共に道を?...」

 この界隈には、勘違いを起こす奴が多い。

「ふむ、それらば私はお前と歩む道を...だな、行くぞ!」


「まあ、いいか...」


「敵は倒した、皆と合流して次へ」

 ラージュがカーマイケルの背に寄り添っている。

 どうした具合でもと声を掛ける前に『うむ、頼れる殿方の背中とはこれほどの広いもの』と、額を背の鎧に当てて『暫し待つのだ...暫く、このままで』としおらしく呟いた。

「ああ。気負い過ぎなんだ、バカが」



 第一の門が突破されたことは、それぞれの門守護者に報告されている。

 勿論、天上宮の主にもだ。

 守護者は、6対の腕を持つ、2対の翼がある天使だ。

 彼らは中位三使のエクスシア。

 魔を退け、魔を討滅するために存在するが、今は天上宮に通じる回廊と門を守る番人だ。


 第二の門を通過してきたのは、天使の群れだ。

 マルが人形師プペンマイスターで作成したゴーレムの天使だったが、見た目はよく模倣できた方だ。

 続いて、本物の天使が仲間を襲う。

 これが奇妙奇天烈な方法で篭絡した――バルドー・アナトミアが命ずる! 我が言葉スペルと瞳力で軍門に下るがよい――といったアクションはなかなか反則的な効果はあったが、彼の所作はあり得ない。

 ローブの肩口を爆ぜさせ、裾からすね毛の生えた汚い足を覗かせ、ウインクするのだ。

 これで吐かない奴はいない。


 マルが涙目で失神する。

 ラージュがい怒り狂う。

 グエンもカブトムシと共に死んだ。いや、昏睡だ。


 だが、対象が天使だった彼らには効果覿面だったらしい。

 目の色変えて、ゲートの向こうにある仲間を襲いだしたのだ。

「これが最終兵器なんじゃないか?」

 意識混濁の狭間にあるカーマイケルの一言。


 辛うじて精神支配を免れた、ベックは――。

「最終兵器祖父とか爺なんて呼びたかねえぞ?!」


「呼んでるじゃねえか」

 戦闘復帰までに1時間を要した。

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