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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
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-55話 エイジスさん? ②-

 魔王の娘・ラージュは、そのまま傭兵団にとっての客人扱いになった。

 豪華な宿屋にひとつの部屋を用意してもらい、湯を沸かせば、内風呂にも入れる快適な部屋だ。

 ただ、調度品なのかひとつ気になるものがある。


 寝室に水色の粘体スライムがいた。

「おまえ...」

 ラージュは、二百数十年の時を魔王と、その配下たちの傍で育ってきた。

 下級、下等な魔物とは殆ど関わらなかったが、目の前の粘体からはそこそこの魔力を感じてならない。

 魔王軍の指揮官クラスと呼んでいい。

「エイジスちゃん、突貫しまーす!!」

 すっかり明るくなった魔女が、ラージュが寛いでいるだろうと豪快にドアを開けた。

 魔女の目に飛び込んできたのは、粘体に絡まれるラージュの姿だ。

 ラージュが『あ!見るな、わ、ちょ、動くってちが、...だからっ、お、おーい』粘体によって溶かされる服、程よく指圧されるツボ、ヒーリング効果のある魔力浄化マッサージの数々。スライムバスや、スライムヒーラーによる夢のようなサービスは、今、都で流行しているエステである。

 ただ、ラージュにその耐性が無かったというだけだ。



同性エイジスだからいいが、人前であんな醜態は晒さんぞ!」

 顔を真っ赤にして、ラージュが小さくなったスライムをしかりつけている。

「まあ、ラージュちゃんに蒙古斑がまだ、あるって知られるのはねえ」


「な、ないぞ! もう、ない!!」


「そんなに恥ずかしがらなくても、ほら!」

 手を合わせ、エイジスの顔が直ぐ近くに寄る。

「かわいい下着を買いに行きましょう、ね!」


「は?...な、なぜ」


「だって、溶かされた服...子供っぽかったし」


「あ、は?!」


「私はに、似合わないぞ、こんな筋肉のついたお、おんなだし」

 全身を真っ赤にして口ごもる。



 マルは、王都の外れにその姿が目撃されている。

 情報収集のために放っていた、ゴーレムらの存在に“闇の者”たちが漸く反応したからだ。

 あの“始まりの街”に入る前、情報収集を目的にいくつかゴーレムを作成していた。

 眷属召喚は、同族や従者を呼び出す魔法スキル。

 ゴーレム製作には、召喚スキルではなく職人系に似たスキルが必要になる。が、こちらも魔法職で構成される。

 所謂、錬金術師の分類。

 マルの得意分野は、あれら特攻魔法はごく一部でしかない。

 どちらかというと、学者にちかい。

 人形師プペンマイスターというスキルで、ゴーレムが生み出された。

 ゴーレムは、術者のステータスが反映されて性能が決まるとされる。命令を理解し、実行できるだけの体力やスタミナ、魔力量なども製作者に反映されるのだという。

 公式では、利用できる巨匠マイスターがほぼ存在しない。

 その実態は謎のままだった。


 浅葱色のローブは、流石に目立つのでマルが用意したのは、U字襟の黒っぽい和装マントに茜色の羽織を用意した。その下は、くのいちの忍具とショートパンツ。腰に二本の小刀を携えた形だ。

 マルの剣技は、中堅レベルの下に入る。

 まあ、殆ど戦力外と考えていい。

 そんな彼女でも剣を持つのは、その剣がチートアイテムだからだ。

 使用者に“高位の剣技を2つまで”使用できるようにする――というメリットが与えられる。

 使用者を条件づける事で効果を発揮するデメリットはあるし、日に何回も使えないなどの制約もある。

 それでも、その技が強力だから持つ意味があった。


 さて、彼女を導いたのはゴーレム2体を地に伏せさせ、椅子代わりに使っている年老いた爺だった。

 彼女の姿を見ても、杖先を向けたまま――

「なぜ、魔王軍との接触を試みている?」


「これだけの戦力があるにも関わらず...か」

 マルが口元のスカーフに指を掛けかけた。

「いや、そのままでも声は出せるだろ?」


「警戒しなくても、こんな場所であなたを傷つける詠唱スペルは叫ばない」

 爺がゴーレムの上で座り直す。

 尻の位置が悪いらしい。

「いやいや、詠唱タイムを経て、再詠唱までのクールタイムが存在するこのゲームで、お嬢ちゃんは何をした? 超位魔法の詠唱中に、最上位魔法の即時発動を3つも行った――つまり、お前さんは殆どすべての魔法を魔法名スペルだけで発動できるということじゃろ?」

 爺の瞳に炎が見える。

 いや、実際にふたりの間に火球が顕現していた。

「お爺さんだって、イメージすれば即発動する魔法を持っているじゃない?」


「ボクの何をどこで見てたか知らないけど...」

 と、言いかけ背中に気配を感じ、振り返った。

 魔力の揺らぎの向こう側にダークエルフの魔女があった。

「お兄ちゃん!!」

 拍子が抜けるほどの甲高い声で、彼女は叫んでいた。

「????」


「あ、あの? どちら...」

 老師の目にはダークエルフの魔女も小便臭い子供にしか見えない。

 もっとも、青っ鼻を垂らしたガキくらいにも見えていたのだが、耳が横に長くて黒い長髪、瞳の色が碧がかっている少女など、親族に居なかったと記憶している。

「もう、妹のこと忘れるなんて!! 酷い、酷すぎる、この変態!!」


「あのー??」


「新しい、お相手の方ですか? お兄ちゃんはロリコンだけど、壊さないようにじっくりと調教してきますから、焦らずに付き合ってくださいね!」

 エイジスは、マルの両手を掴んで『マグロでも、きっと逝けますから!! 大丈夫です』なんて耳打ちしている。

 マルが引き攣っていること何て彼女には見えていないだろう。


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