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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
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-51話 黒い剣士と魔王の娘 ②-

 黒衣の剣士が2対の翼で宙を飛び、自分の力で吹き飛んだ教会を見下ろしていると、その眼下から煌めく何かを感知能力のひとつで捉えた。それをいとも容易く掴み取ると、逆刃付の鏃がついた矢であった。

 教会の一部を吹き飛ばした折、その周辺で場所替えをしていた猟師ハンターの師弟のうち、生理中の娘が飛んできた瓦礫に当たり重症となった。彼はその娘を背負って町中に潜伏して様子を伺っていた。


 幸い、彼女の傷は利き腕とは逆の肩を抉られただけで済んでいるいるが、もう弓を引くことは難しい。

 機械式石弓を使えばいいのだけども、それでも不自由さが彼女を苦しませるだろうと予想がつく。

 それを案じもしたが、仇めいたものを討たなければ、どうにも収まりがつかなった。というあたりが本音だ。師は、教会より西へ走って都で二番目に高い時計塔に登った。

 ここから見える眺めは、馬車の影に隠れる傭兵団は死角に入り、彼には見えない。

 が、背中を向けている2対の翼をもった化け物がようく見えた。


「こいつのせいで」

 という殺気が放った矢に乗ってしまって気が付かれた。

「そこか!」

 抜刀している二本のうち、右手の禍々しいオーラを放つ片手剣が空間を裂いた。

 剣技のスキルか、魔法の類かを判別する間もなく、時計塔の真ん中より上部がすぱっと切り落とされている。師は、慌てて落下する時計塔より飛び降りて数十メートル下の屋根へ避難した。

「こんな離れた距離を、奴は化け物か!?」



 これらのやり取りを地上から見ている傭兵団は、呆気にとらわれていた。

「次元が違いすぎる」


「風属性の変異だ。演出だけでもっとよく観察しろ」

 と、魔王の娘・憤怒ラージュが『やれやれ、相手のオーバーアクションにいちいち反応するな』と指摘している。

「2対の翼も殆ど飾りだ。現にホバリングする鳥を見たことは無いか? その場に留まり続けるには、滑空や風に乗る以上に翼で浮力を得るために絶えず、動かさないと行けない。と、考えれば自ずと飛行魔術フライで宙に浮いてると答えがでるだろう?」

 彼女は、腕を組み黒衣の剣士を見上げていた。

 ただ、癇に障る奴だと付け足している。

「何が気に入りませんか?」


「何もかもだが、ひとつ挙げるなら、二刀流としているあの長剣だ」

 指さすブロード・ソードは黒曜石のような濃い紫の剣と、青白っぽいひと振りを握っていた。

 鞘はなく、腰ではなく背中に背負うような、雰囲気で収納するのだとも思える。

「私は、女だが片手剣これを自在に扱えるまでに辛苦の努力を積み重ねてきた。今でもまだ、動きに甘さが残る。恐らく癖と未熟さで一生試行錯誤を繰り返すだろう」

 歯ぎしりみたいな音が聞こえそうな険しい表情で、彼女は眉間に皺を寄せて瞼を閉じる。

 不甲斐ないみたいなことも呟いていた。

 こと、剣技において彼女は、真剣に向き合ってきたのだろう。

 魔王軍の将軍たちを任す実力は、絶え間ぬ努力の結果なのだ。


「だが、あれが化け物と呼ばれるのは我慢ならんな」

 やや大人げない発言だと、ラージュ自身が気が付いている。

 およそ自分の方が強いことは自明だ。

 飛行魔術で演出ばかりに凝った剣士など眼中にはない。

 人間たちを差し置いて倒してしまっても、いいものだろうかと考えていた。

「お前たちは、魔法城壁マジック・ランパートを使う事が出来るか?」

 ラージュは、あの剣士を地上に降ろす方法を告げた。


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