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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
847/2521

-788話 姫巫女降し 63-

「金鉱床があった?!」

 山師たちの調査結果が、マルの元へ届けられた。

「産出量は僅かです。多分、地殻変動のせいで()()よりあった層より、上に出てきたものと思われるので、本床はもっと下層になると思われますが...」


「その、金だけどさ誤魔化せる?」


「と、いうと?」

 犬っぽい人々は眉を歪ませる。

「ほら、最初の1年だけでいいから産出量を大量にさ」


「いや、無理ですね。手のひら大の石の中に1割...あれば御の字くらいの確率です。金の鉱脈としては細々と大事に掘っていって数、年は維持できるでしょうがね。その他には鉄の方がちょっとイケるようですよ」

 という話だ。

 “金鉱床”みつかるは誤報ではないが、浮足立って先走った感はある。

 山師のコバルド族も『俺たちもはしゃぎ過ぎました』と、反省していた。



 だが、この誤報は思った以上に多方面に影響を与えた。

 エスカリオテ帝国は、西方域に大きく版図を広げている――後のイズーガルド王国領にまで到達し、西域の絶対不可侵領域(=ドラゴンの住処)にまで迫る。が、武力侵攻ではなく、外交努力によるものらしい。

 で、ここまで時間をかけてきたのは、暗愚の幼帝と帝国の財政難があったからだ。

 まだ、密偵が誰かまでは分からず終いだが、無理に詮索するよりも、錯綜するような情報をたくさん流させるように努めされた。


 結果――「やっと動いたぞ!」


 伯爵が涼しい顔で、ラインベルクの執務室をノックもなしに飛び込んできた。

 別段、着替え中でもリフルとの蜜月中でもなかったが、書類の森の中に埋もれている状態だ。

「...俺からも一ついいですか?」


「ん?」


「なぜ、俺が埋もれるまで放っておいたんです、この書類って内務卿の仕事のでしょう? 例えば、これは冒険者ギルドに街道治安維持の依頼を出すためのものですよね?」


「いや、だから...」


「ええ、報酬の問題ですよね。うちの領から横流しした献上品の償却金は、どこへ消えたんです? これで報奨金とすればいくらかプールしながらでも...」

 伯爵はやや詰まった物言いで。

「それな、陛下がお手付きにされた...」


「5歳で何に手つき...」


「いや、それよりもだ! 帝国がようやく宣戦布告してくれたぞ!!」

 挑発が成功したと言いたげだ。

 が、戦争のほうこそ“()()()()()”だというのが、ラインベルクの考えだ。

 戦争している場合ではない。

 緩みまくった締め付けは急務で、集めた税金がまったく国庫に入っていない。

 横から掠めとる役人や領主も多い。


 もっと人の金だという自覚が必要だ。

 イラっと来たラインベルクは――『この国、一度、解体するほかないな』――と、怖いことを口にしていた。



 エスカリオテ帝国から派遣された先遣隊は5千余り。

 “シルヴァーン”城塞に入る。

 監視塔を改修した砦だが、兵の収容人数は2千人で、残りは野に天幕を張っている。

 指揮官は、元四皇子の麾下にあった士族を将軍に抜擢した者だ。

 が、率いている兵との信頼が未知数だ。


 帝国兵()()であるから、命令には従う姿勢は見せている。

 ただし、エスカリオテの兵士育成プログラムは、血統第一主義であって、指揮官に成れるものは士族以上とされているのがそのまま、不満につながっているのを未だ知らない。

 職業軍人をつくっているにも関わらずにだ。

「あのブルーメルが受け身だと聞かされた時は耳を疑ったが、まさか...ここに布陣しても対岸の城に将旗さえ掲げられんとは?」


「誘っておるのです」

 この5千人隊に配属を命じられた副将だ。

 一応、士族の末弟に入るものだが、変り者もいて一兵卒からコツコツと実績を積んできた者たちである。

 同じ釜の飯を食らう者たちからのささやかな希望の光だ。

「そ、そんなことは分かっておる」

 せいぜい任された兵は千人ていどの士族が、急に5倍もの将になる。

 プレッシャーだ。

 5千という数は、戦局に影響を与える数でもある――吐き気を覚えた。

「デモンズレイク城でしたか...丘陵地に聳える古城とのこと。築城は200年前で、城と形容する前に館と呼ぶにふさわしく、城壁は石積の低いものとか」


「では、まず燃やすか」

 帝国式攻城法の一手が“先ず、燃やすか”から入る。

 矢で射かけるのも、火炎級を飛ばして燃やすのも大差ないし、骨董品的な価値のある()さえも燃やすかという即決さは潔さを感じる。

 ただ、副官の方は、面倒だなあという表情を浮かべた。

「もう少し賢くやりましょう」


「あ、あん?」

 やや不機嫌になった。

 将軍の言葉に尊敬の念が足りないという理由で、副官の一人がその場で殴られた。

 他数名の代将らが彼の激高を抑え込ませる。

 頬に青い痣をつくり、口の中を切ったのか血を滲ませて――「差し出がましいことを言いました」


 空気は陰湿な雰囲気に変わる。

 それぞれの千人将が、兵士たちを宥め、副官の手当てを買って出る代将もでる。

「いや、これは閣下を読み切れなかった私に落ち度がある...」

 と、よろめきながら幕僚から離れ、外の天幕へ移った。

「...っ私のことはいい。それよりも、投石器を用意しておくんだ」

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