-787話 姫巫女降し 62-
聖属性は、チート魔法だ。
まず、属性という括りで話を進めているが、属性の縛りがない。
実際は、無属性で想像力があれば――炎を思うだけで、炎を召喚できる。
火は熱いと思うのは脳と肉体が覚えた記憶であるが、聖属性で想像されたものにそれらの情報はない。
“後付の設定”が加わることで、痛覚、嗅覚、視覚、聴覚などが加えられるようだ。
だから、創造次第では“目には見えない炎”というものが創造されると、視覚情報のない魔法攻撃を喰らうことになるわけだ。
だから、聖属性はチート魔法だと言われている。
言われているが、体得方法と条件がなく。
誰もが安易に取得できないのも、謎なのだ――魔法の加護にはありきたりな四大精霊をベースにしたものが採用されている。冒険者以外にも世界にあるすべての人々には、精霊の加護とする得意な属性と不得意な属性が絡み合って個性を形作っていた。
これらがあることで、人々はユニークに物事を考えうるのである。
そこで魔法は、無課金であれば4つの属性の中から、得意属性を伸ばす形で自動に選択される。
ここまでが、マルの基本設計だった。後に収益も考えて所属するプロジェクトチーフマネジャーこと、自称“神”が闇属性と光属性を課金アイテムとして追加したというのだ。
これで6つだ。
マルとシヴァを含め、これらに携わった者たちは、7番目を設計していないのだ。
◇
マルの視線は、空気イスというごく、簡単な拷問に耐える少女に向けられていた。
すでに彼女には、師匠から刺すような視線を受けても、反応を返すような余裕はなくなっていた。いや、この重力に惹かれるような魂の重みに今にも股関節から飛び出しそうな苦しみに耐えている最中なのだ――「バカか?! そりゃ、体重だ。そんなに股を開いたら、尻の重みで膝が笑って当然だ。支点は3つ! 背中の壁板が一番の拠り所で、ここに上半身を押さえつけるように充てる。そんで、足だ。開脚したら、力が伝わりにくく疲労の堪りも早くなる...ま、お前の事だ...ボクにパンツの染みが増えていくのを見てもらいたいとかいう変態の嗜好なんだろ?」
と、マルが彼女に語り聞かせると。
エリアスからはギョロっとした瞳が向けられた。
何とも言えないおぞましい雰囲気の――人間の悪意のようないや、これが狂喜なのかもしれない。
「...っあ、ありがたき幸せ」
って、果てた。
潮をまき散らして尻から床に落ち込んだ。
今まで溜めに溜め込んだナニかが弾けたように、爆ぜた。
◇
「シャワーまで頂けるとは思いませんでしたが...とてもいい」
「そうじゃないよな、何で来たんだ...ココに?!」
遅い朝食だけど昼前なのでセーフだ。
シヴァは、7分丈の袖つきシャツを着こみ、ジーンズでエロい肉体を包み込んでいる。
一部、貞操感のない衣装を身に着けることもあるが、服を着るという最低限のモラルだけはある。
これは、リアルの彼女からくる、反動であるから大目に見れた。
が、マルと対峙するエリアスには、それが皆無ともいえる。
「まあ、飯を食う前にエリアスは、服を着ろ」
「何故でしょうか?」
「いや、シャワーを浴びたなら風邪をひくぞ?」
気のない返事が返ってきた。
もとより彼女には、首にかけたタオルケット以上の布は不必要だという考えがある。
プレイであれば、衣服を身にまといそれが沁みていくさまを見せつけるという、ソレもありと考えてあるが、それはもうやった的なところにある。
だから、今は解放を満喫している。
「んー、見ないうちに...元からこんな子だったか?」
「抑圧されてた環境からの...ですかね?」
マルの懐をまさぐってきた時の少女は“たすけて”とつぶやくような雰囲気の子だった。
が、マルは勘違いしたのだ。
劣悪な環境からの脱出を求めた少女の訴えではなく、とてつもない魔法量を内包するマルであれば、心と身体のバランスを改善してくれるに違いないと、少女はそれを求めたのだと。
だから、義姉や義妹たちが次々と、男たちに凌辱されていくのを見続けされた子は、サイコパスに壊れたのだと。
これは、元からなのだと知る。
「ま、風邪を引かれるのはボクとしても困るので...」
と、“BUSTER”と書かれたTシャツを投げて渡す。
露店で買ったフリーサイズだが、マルの小柄な体では膝上まで覆い隠してしまう逸品だが――。
「師匠~」
振り返るふたり。
無駄な肉が邪魔をして“BUSTER”は横に大きく広がり、もはや字が読めない。
裾もむちっとした下腹の肉をやや隠しただけで、髪の色と同じ茂みが見えていた。
これには思わず、マルの拳骨が炸裂している。
シヴァとしても――『まあ、そうなるわな』と言わざるえなかった。
◆
「シャフル州の大量虐殺は?」
ラインベルクは寝耳に水という風に伯爵へ訪ねる。
「いや、これは予定調和さ。旧支配階層が残ったままでは、利益のすべてが国を豊かにすることはない。必ず穴をみつけて、そこから甘い汁を抜き取るだろう...ああ、国民にとっては恐怖政治の再来だと匂わせてしまったが、そこは長期的に解消する方法を見つけていく外はない」
「だと、してもシャフル州で数万ちかい人が...」
彼に対して笑ったわけではなく、考えを鼻で笑った。
「その代わりに数十万の入植者が同地に根付く。王家の軍隊であって、幼帝のではない軍隊だ...今、いえるとすれば、君に連なる者からの軍隊がシャフルに置かれたことになる。でだ、もう一つ朗報だ...シャフルの鉱床だが“金鉱”だったことが報せにあった」
誰もの目が光る。
財政難が一気に好転する兆しがあった。
「埋蔵量は分からぬが、情報だけならば」
「ええ、エスカリオテ王を動かすことが出来ますね?!」




