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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
843/2519

-784話 姫巫女降し 59-

「だから...」

 内股を叩き始める幼帝。

 掻く手を止めて叩く行為は、痛痒いというあたりだろうか。

「いつ破綻するかも分からないのであれば、破綻するまで待とうという気長な姿勢は、命取に成り兼ねません。何しろ、幼帝イングヴルム陛下は10年もすれば、御成人されるわけですから...」


「成人したからといっても」


「子供のうちは暗愚でも、10年後の少年が、10年前と何も変わらないというのはありましょうか? 仮にですが、1年で大化けしたラインベルク辺境伯とその愛妻リフル伯爵夫人でんかが後見人に就かれているとしたら?」

 内務大臣の口から唸る声が漏れた。

 幼帝の顔は『姉上が傍に?!』という表情になる――これを制止するような形で、ラインベルクは『リフルはおっさんの近くには置かないぞ!』と諫めておいた。

 明るく成ったり、落ち込んでみたりと激しく表情が変わる幼帝である。



「そんなに都合よく、相手がこの策に乗るでしょうか?」


「だれが策だと言ったか? ()()()と言っただろう。辺境伯の臣下とは共通の友人を経て私も知己を得ている者だから、もう、先刻には調査開始を依頼してある。これは国家事業だという吹聴も済ませてあるから...」


「それが、()()()?なんですか...まいったなあ」

 ラインベルクの目が糸になる。

 軍務大臣としてはその先が気にかかる――「で、えっと兵はどうする?」――兵とは、最前線に送っていた兵役義務者だ。恩給の面倒も見なくてはならないから、軍の解散というのは避けたいのが事実だ。できれば、誤魔化しきって10年はただ働きみたいな状態で飼い殺しておきたい。

「むむ、なんか物騒な気配」


「国庫に金がないのだろう?」


「今すぐにという訳じゃない。当面は国中の商家から借金をして、財を集めもって3年で返済のめどをつけなければいよいよもって()()()という状況だと...まあ、そんなところか」

 伯爵のぶっちゃけネタが炸裂した感じだ。

 どこまでを信じるかによる。


 ただ、マルを“シャフル”に送ったとすれば、鉱床のめどはある程度ついているという事だろう。

 いや、これも摂政だったあの人の遺産か――と、ラインベルクはため息を吐く。

「感謝こそすれ、これが身になるかは我ら次第だ」

 伯爵はトーンを落として応えている。



 一方、元第一皇子領“シャフル”州では、コバルド族の山師なる集団がマルと、シヴァ卿を伴って訪問していた。

 彼女らの宿舎は、州都マルナスの市庁舎である。

 一応、帝国の要人であるからもてなしも用意した形だったが、シヴァ卿がこれを断っている。

「珍しい事をしても、ボクの評価は変わりませんからね...伯母上は、食いしん坊でわがままなお方です!」


「別にそういう意味じゃあないんだが、まあ、お前がそんなに私を褒めるってことは、あれか? 姉さん(=マルの母親のこと)への悪戯を根に持っているのかな。いいじゃねえか、母の日の烏骨鶏かすて~らを食っちまっても、あのひとさんは怒らねえよ」

 ふてくされたマルが口を尖らせ、

「母さんが怒らなくても、ボクが怒ってるんです! って、いつの...そんな話じゃなくて」


「違うのか?」


「な、なんだって歓迎してくれるっていう宴を悉く断ったんですか?」

 目を丸く、口も半開きのシヴァだが、小首を傾げて。

「胡散くせえじゃねえか...帝国宰相いや摂政が目をつけて、国家事業一歩手前だった物件のこの土地はいうなれば、既得権益の宝庫だ。恐らくは簡単な青写真も上がってたはずだし、事業者の名も決まりかけてたはずだぜ? で、あればそういう連中にとって一番嫌いなことは、なんだ」


「えっと、後から引っ掻き回す...ひ、と..た.ち???」

 それがボクたち――といった甲高い声が出た。

 もっとも、コバルド族はそういうのも承知で戦士階級の士族も選抜されて、山師と共に召喚されている。これは村を出る時のシヴァが人選したものだ。

「引っ掻き回すとやっぱり後々で騒動になるから、業者は帰る予定はない。そのパフォーマンスが宴のキャンセルだ。ま、私らを害したところで、新しい役人なり軍隊が派遣されるだろうから、彼らにしてみれば、私たちが何をしに来たのかというのが知りたいだけなのだろう。そこで宴席で近づきに成ろうと考えたというあたりだ」


「そこまで分かってるなら、付き合ってあげても」

 何で?という表情をマルに向けた。

「......」


「そう、それだよ」


「どれ?」


「今、無言で返したろ?」


「うん」


「私としては、一応、騎士爵のマルよりも高位の貴族として、一任されるべき決定権がある。姉さんに代わって、マルの男も吟味する役目もあるからな...そのつもりでな。でだ、鉱床の採掘業者は、摂政が選抜した者たちを採用するので、そもそも会う必要がない。こういうプロジェクトがあったという事実だけを帝国に報告するためだからだ...が、わざわざ彼らと膝を突き合わせていうほどの面倒なものはない。だから、断ったんだ...」

 まあ、一理あるようだけど。

 商人なら、間を読んで理解してくれる可能性はあるが、役人は理詰めの人たちだ。

 些細な綻びも許されない雰囲気だ。

「あん? 皇子領の役人たちか? 知らないが、私なら皆殺しだよ」

 巨体がソファに沈み込む。

 揺れる爆乳が第二ボタンを弾き、マルの額に直撃する。

「な、なんで?!」


「いらねえだろ、誰の配下だよ...第一皇子には妻もなく、養子が居なかったから廃された。これで空白地になって帝国直轄領に差し戻ったわけだが、彼らは帝国に恭順したか? 空の王府を守って第一皇子の臣下として、摂政を脅かしもした訳だ...これが今まで手つかずの鉱床の正体だからな、これを正す意味でも...ぶっ殺す!!」

 ちょっと楽しそうな雰囲気だ。

「でも、王府の兵も加えると...」


「ああ、万はくだらねえだろうな。いや、そこは気にすんな! 騎士も手配済みで、山を調べてるうちに片づけてくれるさ」

 と、あっさりな物言い。

 マルの胸中に、村を早々に出立した一群があったのを思い出す。

「まさか」


「ああ、それな」

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