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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-780話 姫巫女降し 56-

「...まあ、そういう事でおめでとう、ラインベルク=ドメル辺境伯」

 “遠見の鏡”の向こう側で、物凄く呆れられた表情のラインベルクがある。

 昨日の今日、舌の根も乾かぬ間に取ってつけたような爵位と、リフルの復籍が認められた。

 しかもこれで、実質的にエセクター伯爵よりも、ラインベルクが高位の貴族という立場になったことを意味する。

 盗賊や、無法者を束ねるマスター・ラサにも恩恵が入り、辺境伯領内に盗賊ギルドを持つ町が与えられた。

 とは言っても、規模は村に少し毛が生えたような雰囲気だ。

 これから村を街にしなければならない。


 また、マルの立場も少し変わる。

 少女の形だが、騎士爵を得た――あまり意味はないのだが、これで辺境伯の軍師という肩書に箔が付くのだというのだ――が、あくまでもこれは爵位を推挙した者の方便なので、本当に箔が付いたのかまでは誰もわからないという。

 ただし、マル曰く『面倒だなあ』という意見が挙がっている。

 その傍にいるシヴァ卿も『...っ食えないもん渡してどうすんだ』であったというのだ。



「シヴァ卿が文句を言うとは思わなかったが、彼女とマル殿の間柄は?」

 ラインベルクは帝都に呼びつけられた。

 さすがに辺境伯へ推挙されたのだから、これのお礼を王宮の主に伝えねばならない。

 これが面倒この上ないのだ。

 で、上屋敷に行く序に、“はちみつと熊手亭”に顔を出したところだ。

 少し遠巻きに3人のかわいらしい娘らが、ラインベルクを見つめている。

 ひとりは怖い顔だった。

「あれ? 見ないうちに新しい子を...」


「うんな訳ありますかい、看板娘たちですよ」

 マル1号~3号まで。

 2号がすごい形相で睨んでいるのは、彼女のお腹の匂いを嗅ぎまくった男だとロックオンしたからだ。まあ、あれは疲れていて、誰でもよかったという失礼な話が冠につく所業で、マル2号は近くにあって犠牲になっただけだ。

 だが、あれからもう、1年になろうとしている。

 ラインベルクの方ではもう、終わった話であった。

「随分と都合のいい時計を持ってますね?」

 宿屋の主人の方は、2号の心のケアを献身的に付き合ったクチだ。

 もう、愛娘くらいに思っているくらいだ。

「そうか? いや、ぷにっとしたお腹の感触は...まあ、忘れがたい感じだが、俺の趣味ではリフルのような野性味のある蜜の香りと、締まった尻肉が好きなんでな」

 厨房の奥で何かが壊れた音がした。

「ま、気に留めてねえのは分かりやしたが、あの子のことはそれくらいで終わりにしておいてくだせい。それ以上、うちの看板娘をいたずらに抉るってんなら、俺っちも()としての意地ってのを通させてもらいます」

 店主の怒りが目に現れる。

 一応、冒険者から選抜して迎えた、人物であるから腕っぷしでは、リフルと大差なく強い。

 マル1号も三姉妹のお姉ちゃんとして、この()から剣の手解きを受けていた。

 店主曰く『獲物を捌くのも、盗賊や魔物を捌くのも基本は一緒だ。一撃の下で、相手の動きを封じ、そして一気に血抜きする。例えば、血抜きに失敗して体内で噴出した場合は、肉も腸も食えたもんじゃないからな...ここは気合を――』

「なんちゅう事、教えてんだ?!」

 その捌き方を知ると、ラインベルクは憤慨する。

「いいか、1号ちゃんのいいとこは、本体(=マル本人)に似合わず天使のような微笑みと、可憐さがだな、えっと、ほら...メレンゲのようなふわっとした雰囲気が特徴なんだ! それに腑分けとか、店主...お前、罪作りなことをしてくれたな?!」

 どの口が言う――と、3人娘の胸中。

 カウンターから見ている、ジト目でずっと見ている。

「そ、それにな。2号ちゃん...あれは、マシュマロだ! 好みは置いとくが――」

 とりあえず甘酸っぱい何かをずっと話している。

 2号と3号の耳が赤くなるような、恥ずかしい話を延々とだ。



「ま、落ち着け...そんな腫れた顔では本日の出仕は難しかろう」

 ラインベルクの顔が2倍はおろか3倍ちかく大きく腫れている。

 原因はカウンターにあった三姉妹が飛び出してきて、フルボッコにしていったためだ。

「お前も、幼帝に似合わず、女の子に嫌われる鬼畜だと分かっただけでも...俺としては複雑な心境だが、これは()()という現象だったと思って諦めるとしよう」


「あきらめずに、指導を」


「何を指導するんだ?」


「えっと、なんでしょう?」

 知るか――なんて声が出た。

 結局、シヴァ卿とマルが参内することとなった。

 マルは自分の爵位推挙と、その礼であるが、主人のラインベルク辺境伯の代理も兼ねた。

 しかし、一緒についてきたシヴァ卿の立場は意味不明である。

「あ、えっと気にしないで」

 シヴァといえば、奇抜かつ大胆な服装が多いと噂の絶えない人物だったが、王宮内での彼女からは“()()()()()”なんて言葉が見当たらない、完璧な貴族男性風ドレスコードでの参内だ。

 ただし、性別逆転な着こなし方は特筆すべきところだった。

 マルは、ベルベットローブにガーネットをふんだんにあしらった、留め具を用いており深々とフードをかぶっている。さらに入念にだが、顔の半分を仮面で覆っていた。


 実は他意はない。

 シヴァ曰く「これが絶対、()()()()かわいいから!」という鶴の一声だ。


 案の定、怪しくてが今、独り歩きしている。

「えっと、その方が...ラインベルク辺境伯のぐ、軍師か?」

 幼帝に促された侍従長が問う。

 マルは頷くだけに留めた。

 声を発するのは、シヴァ将軍だけである――彼女は前もって、耳打ちし合うように話すことを強要していた。それが怪しくて()()()()いるからだといったからだ。

 これらのやり取りが、謎深き状況へと発展している。

《ラインベルクめ、よもやこんな手札を持っていようとは...》

 侍従長を通して、幼帝イングヴルムの舌打ちが聞こえそうだった。

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