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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-760話 姫巫女降し ㊳-

「転移によって宰相あちらとは真逆に居る。戴冠式を無事に終えて戻ってきた足で先ず、襲うのは三皇子領だよね...この場合の策は何かあるのかな?」

 マルがエセクターに問われた質問だ。

 彼女は「( ==)」こんな表情かおで、

「ここに現当主の御母堂さまが居られます」

 紹介された彼女は笑みを浮かべながら、

「人質のメリーです」

 と、告白している。

 お付きの給仕や、衛士らも驚きだったようだ。



「人質だと公表すれば、帝国としては多少の無理があっても、対象をドメル子爵領ひとつに向けざる得ない。また、三皇子領を通過できなければ、子爵領への進軍ルートは、自ずと北域鎮台府から山道を利用したものしかないってのも、こちらにはメリットであちらにはデメリットだと言える」

 ひと悶着はあった。

 三皇子領を守る為だったとはいえ、護衛の者たちには伏せられた策だった。

 知っていて加担というより、発案者のメリー妃の聡明さに頭が下がる。

「ええ、わたくしとマル()()()の見事な連携プレイですの」

 と、妃は微笑む。


「ま、これによって三皇子領へは、宰相だけでなく新体制の帝国も、()()を仰ぐようなアプローチを掛けざるえないと思う訳。必要なら取り込むような事もするだろうって...話は、御当主セラスさまにも献策してあるので、埒が明かない外交をみせてくれるよう頼んであります」


「埒が明かない外交って...」


「セラスの口八丁、手八丁みたいなところは、本当にお父さんそっくりなのよ」

 と、よく笑う妃だ。

 ()()()()というのも、三皇子殿下のことだ。

 この妃とあの皇子殿下はそれなりに仲は良かったということだ。

 庶子を作っちゃうこともあったわけだけども、そこはまあ、わりと根には持っていないような感じだ。

 いや、長男であるオウル公が良い人なのだ。

 育ての親であるメリー妃の顔が、綻ぶくらい親孝行しているようだ。

「ってわけで。今のところは、皇子領を通過するまでの半月は、稼げる感覚でしょう」


「は、15日前後って...おま、それを...本気か?!」

 リフルの方は、小首を左右に傾けながら、考えているようないないような。

 煮え切らない風にとっていると、

「じゃ、先ずはご飯、食べましょう!」



 第六皇子でも、戴冠式を行う準備をとる。

 支持者は、兄弟たちだ。

 例えば、蟄居中の第四皇子もこれに加担して、第五皇子は中立を貫く。

 七皇子と八皇子はもとより、将軍職ですでに兄を支えているので支持しているのと変化はない。

 エスカリオテ州の聖地“マルティア”の祠で儀式を行うと宣言した。


 ネムルト神殿から、反逆者を同時に対処することが敵わないから、あえてこの時期に合わせて第六皇子も動いたことになる。

 それは、マルも予測済みのことだった。

 二人としては、どっちが先に動くかという、タイミング的な問題だけだった。

 結果的には、リフルの癇癪があって今があるのではなく、マルと六皇子、その周辺情勢が混ざり合ってこんな状況に至ったということだ。

「まあ、面白いことを思いつくものだな」

 マルが皇子に宛てた文を今一度、読み返している。

 これがなければ、彼は戴冠式を強行しようとは思ってもいない。

「で、本当にラインベルク側も動きましたね...」

 不思議そうな声をあげる副官。

 今でも十分に不可思議だと、危険視している方の人だ。

「まあ、この状況では帝国内部の異物として対処されるなら、いっそ...という読みあいは確かにその通りだ。言われるまで気が付かなかったのは癪だがな。彼らにとっては、帝国軍と対峙できるようなトコは見当たらないが、まあ...我らが乗り気になったことで活路はみえたものかな?」


「見えたでしょう。しかし...本当にあの遺言、誠でしょうか?」


「あん? ああ、リフルがか...皇帝おやじの事だもう一癖ありそうな雰囲気はあるが、リフルは聡明な子だ。あれが認めた男が、次期皇帝だと言われても俺には全く口をはさむ余地はない。まあ、いい治世は築くだろうなとは...な。だが、これは男として挑むべき大事業だ。挑まずして受け入れるのは...俺の、スタイルではないよな?」

 六皇子の一人称が変化する。

 熱くなると“俺”という風に変わる性格だ。

 そもそも、10人いる男兄弟の中では一番、玉座にちかい男だった。

 長兄、次兄らもいや、三兄でさえ自身の野望に忠実であるなら、この後継者争いにもっと本腰を入れてきただろう。

 そういう気概のある男たちだ。

 リフルには少し物足りない男兄弟だったろう。

 が、こと玉座をめぐってでは、長兄――あれは、絶大な財力を背景に持った内政に明るい人だった。

 次兄――あの人は、数ある大将軍を実力で勝ち得た唯一の皇族だった。兵士たちの人気や信頼、忠誠はアカデミー出身の貴族よりも集めた人だ。

 ゴブリンに殺されなかったら――いや、いい。

 三兄――惜しい常識人を失った。恐らくは、宰相が一番嫌っていたであろう、正義の人だった。


「どの皇子らも、ある一面では実に、才知に溢れた方々でしたね」

 副官も瞼をつぶれば、それぞれの皇子の顔を思い出すことができる。

 それぞれと、親交があったわけではない。

 彼らに付き従う者たちとは、薄いなりの知己は得ていた。

「ああ、失って惜しかったのは三兄だな。あの人の求めた“法による秩序”は本来なら、今こそ必要な時だが...およそ宰相の悪だくみで今は、この世にいない。俺は強大の中であの人が好きだった...穏やかな人だったのに」

 これは敵討ちのようなものだと言った。

 それが、エスカリオテで皇帝になる男の決意だ。

 祝福してくれるのは、各皇子領だった市民たちだ。


 ブルーメル・イス王朝の中にもうひとつ、侵攻可能だが厄介な国が興る――イス・エスカリオテ第二帝国とのちの時代で呼ばれる治世短き国家だ。

 その戴冠式が迫る。

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