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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-751話 北天の明日へ ①-

 黄天王国の首都、北天京で起きた“北天の乱”は静まった。

 が、それと同時に黄天王国の滅亡が公式見解となった――抜け殻の姫巫女が婿を取って王族の復興という形も考えられたが、心がないうえに、肉体ばかりが成長した赤子のような少女に、()を生せるのかという問題が残った。

 王族に連なる外戚の連中どもは、()()()()()()()()()と、いうものもあった。

 これを退かせたのは、救国の英雄扱いのメグミさんである。

 新たに国を興すか、ひそかに滅亡するかの二択が今の課題だ。



「いっそのこと、他国から皇子を迎えて黄天の養子にしたら?」

 クロネコも他人事のように告げた。

 そもそも、その魂はネコの体の中に収められている。

 やや時間も経ち、戻れる保証はない。


 その鍵を握っていそうな、マルは今も昏睡中である。

 彼女の生命を何度も救ってきた、冥界の女神も“黄泉の鏡”という冥界通信アイテムで――「こっちに来てないから、安心してねー」と、告げていたのが気にならないわけでもない。例えば、エサ子なら、歩くのを諦めたら、道の端っこで足の匂いを嗅ぎながら九の字に曲がって、動けなくなっているだろう。

 それを探せば、容易に見つかりそうだ。


 と、そんな話をしたら、エサ子は「そんなことしないも~ん」で泣いてしまった。

 ただ、部屋にあるすべての人間が皆、()()と思ったことだ。


「まあ、仮に養子縁組で国王を立てるとする。でも、どこから向かい入れる? 黄天王国は、実質的には北天帝国の主軸でしょ、下手な国から迎えてしまうと、後が面倒じゃないかなあ」

 部屋の中には、いくつかの“遠見の鏡”が設置されてある。

 七王国の中で、お呼ばれされていないのは“蘇”王国だけだ。

 この国がかき乱したりしなければ、もう少しまとまって戦力でプレッシャーを掛けることが容易だったかもしれないわけだ。

「そう、そこが問題だ...七王国の中からでは、単に空白の地を手に入れたようなもので、今度こそ“蘇”が本気で五王国を攻めるかもしれない。いや、そういう口実を与えかねないからこそ、王を迎え入れるのも立てるのも重要だと言える」


「厄介だなあ」

 また、他人事のように吐き捨てた。

 いや、もともと政治とは無縁だった――彼女は姫巫女で、聖女の声を聴くことが仕事だったのだ。そこお告げという言葉一つで、右にも左にも流れた北天の天子さま。彼女がもしも、政治を少しでも意識して差配していたのなら、それはとんだ食わせ者だったということになる。

 クロネコは、床にはいつくばって明後日の方を見ている――。

「ま、一朝一夕で事が治まるのだとしたら、先人たちの方がはるかに政治向きなわけだし...私らみたいな素人があーだ、こーだと言い合っても埒が明かないと思わない?」

 珍しくエサ子が口を開く。

 当然、すべての視線を一身に受けるも、彼女は必死に親指の間の匂いを嗅いでる最中だった。



「黄天をつぶしても、そこに住まう人々には保護者が必要だ。仮に王国ではなく自治区だとしても、為政者が入れば、どの国と結託するかわからない。どちらにせよ、自分たちの利にならないなら、とりあえずは嚙みつくのが“蘇”の立場だろう」

 森の中に、3人ではやや手狭な小屋が立っている。

 ついぞ、数日前までには何もなかったところにだ。

 “月の城”総帥、キルトという青年のほかに異形なる者“熾天使”、賢者“プロフェッサー”の3人だ。

 うち、男は当然、キルトだけだ。

「皇子の暴走を利用して国盗りと定めていたが...案外、上手くいかないものだな」


「そういう面白いことをするなら、放浪中の私を呼べ」

 やや不機嫌そうに“熾天使”のお面が歪む。

 顔じゃないのはわかっているが、素顔を隠す意味が分からない。

「“プロフェッサー”...」


「呼び難いでしょ、セイでいいわ...」


「では、セイ...身体の調子はどうだ? 傷になりそうなところは私の治癒魔法ヒールで癒しておいたが...その、何か酸っぱいものが欲しいとか、大食ぎみになったとか...そういう」


「ないわよ?!」

 怒気が混じる。

 記憶がないので、房中術によって青年の身体にMPとHPを注いだ事実を知らない。

 まして、連結を解くと大出血していた状況に、熾天使でさえ慌てたものであるから、2、3我慢させた濃い汁が中に留まっていないか心配でもあった。

 さすがに妊娠でもされたら、処女受胎とかいっても誤魔化しきれそうにない。

 ただし、確か20代も後半くらいの女性という話だったが――「なに? 何かついてる???」と、熾天使が見つめていた視線に気が付き、さらに怒っている。

「いや、本当に?」


「私が寝てた時、何かしたの」

 わりと、ドキッとすることを聞く。

 キルトは、彼女の肩に手を置き、耳元で――「何をして貰いたかったんだい?」なんて、歯の浮くようなセリフを吐く。が、これが効果てきめんで、頬を赤らめモジモジしながら「総帥の、そのお言葉だけで十分です」――きゃあっなんて声が出ていた。

 まったく、どこからそんな甘い声が出てくるんだか。

《この、女ったらしが...》

 念波で、キルトを追い詰めるもさらりと躱す。

《セイさんが俺に好意を持ってるのは、最初から知ってますからね...だから、彼女じゃないとダメなんですよ、だって俺のために貞操を守り続けている健気なお姉さんですからね...》

 小気味悪い笑い声が聞こえた。

 

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