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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-728話 姫巫女降し ⑧-

「なぜなら、お前らは()をかいたのではなく、計画的に6合目の防衛ラインである砦も間髪入れずに強襲した。これには我々も騙された...まさか、意図的に行動しているとはな...」

 カマを掛けてみた。

 左の親指の爪をペンチで挟み込む時――

「まさか人間にも機転の利くのが居たのか?!」

 と、ホブゴブリンは呟く。

 顔色は非常に悪い。

 血の流し過ぎでは無く、単に右手の激痛で顔を歪ませているからだ。

 思った以上に痛いらしい。

 拷問官も、実は見るに堪えない状態だった。

 彼の後ろには、マルの姿がある。

「...っ、だがな、俺たちは雑兵でゴブリン王の手足となって働く身分だって事には変わらねえ。だから、大したことは知らないってのは...嘘も偽りもねえぜ」

 拷問官への返信ではない。

 その後ろにある者へだ。


 拷問官が絶えず、素振りに示さなかったが“後ろ”に気を配っていた事。

 それが仇となって彼に知られたわけだ。

 ホブゴブリンの表情にニヤついたものが浮かぶ。

 魔物特有の“千里眼”というスキルだ。


 捕虜らしきものを一人以上を残して()()捕まるそぶりを見せる。

 知覚耐性スキルに優れたものが送り込まれ、彼らは巧みな演技で逆に敵の内情を探るのだ。そして、彼の利き目を通して城内の状況知るという手段だ。

 これは長期戦の構えだが、短期決戦に用いなかった者もいなくはない。

 マルは思わず高笑いしてしまった。

 この場では当然不謹慎だ――唖然としている拷問官をしり目にゆっくりと、席を立ち――まだ、笑っている。

 笑いが止まらないという雰囲気だ。

「...」


「届かないよ。...君たちの種族は下級種だろ? “千里眼”なんて過ぎたるものを過信しすぎだ結果、君の言葉も君の知覚もそして、およそその思考も...主には届いていない。そう...つまりはスキルジャマーだよ。ある種特定のを対象とすれば、そこ固有スキルさえもジャミングノイズをかぶせることができる。...ま、便利に見えて、実に厄介だが」

 右手の詰めを亡くした魔物と、拷問官の間に入るマル。

 彼女は、拷問に対して()()()微笑みかけて――君の役目は終わったんだけど、どうした者だろうか――と、問うている。

 彼の直上といえば、宰相だ。

 子飼いのだからどうこうされる筋合いわない。

 ただ、マルが微笑みながら彼を見る目が怖い。

「何者だ?!」

 部屋の中の会話は秘匿されている。

 例え国王でもその会話を聞くことはできない。

「いい質問だが、君とボクは話してなかったよな?」

 睨みつけられて、ホブゴブリンの額に滝のような汗が流れだした。

「あ、いや...忠誠を誓います」


「よし! じゃ、ひとまずは」

 どんよりとした思い影が部屋に充満した。

 マルの頭頂部にある2本のくせ毛が上下に動いている。

「君らの今までの作戦について聞こうか?!」

 再び拷問が始まる。

 だが、その拷問はマル主導によるものへと変化し、国中の魔物たちが“()()”特有の重圧を受け取った。

 発信者はもちろん、マル・コメ本人だった。



「マスター・ラサの調査結果を発表する!」

 また“火蜥蜴団”の実質的リーダーとなっている男からの情報だ。

 ラインベルクは信用しきっているが、マルは面識がないので俄かには信じられないと転がった。


 彼が広げたのは、北域鎮台府の周辺図だ。

 聳える高い城壁と、左右に伸びる長城が()()と、帝国に安全と平和を確約している防御施設だ。この施設は防衛魔法の数々で支えられた、物理的な“魔法城壁マジックランパート”であるといえる。

 とは、言え魔法以外の攻撃に多するには、衝撃耐性バフの効果範囲内であることが望ましい。

「師匠の時代ともなればそれが、精一杯ですよね」

 嫌味じゃないのに嫌味に聞こえるマルの言葉。

「ま、あって投石器だし...想定が蛮族のとなれば、な」


「全体的な把握ではないが、要するにだ――この城より6里北に“バトゥワ”という港町がある。町自体の規模は大きくはないものの、城壁は堅牢で一朝一夕の陥落は難しい。また状態の戦士は、帝国が傭兵として雇った実績もあった」


「助けに行こう」

 と、声を挙げる騎士たちがある。

「物理的に無意味だ。こちらが手薄になれば、再び各地から兵士を集めて城壁の外にとりつくだろう。そして今度こそ悲願の城壁越え成し遂げる」

 ラインベルクの言葉には重みがある。

 マルが尋問した結果、得られたスパイの存在だ。

 宰相も味方だと思うが、ここは身内だけに明かすのが賢明だ。

 帝国から派遣された兵士、騎士も信用が置けない。

「挟撃の恐れですか?」


「なくはない。だが、もっとも恐れるべきは“()()()()”という事実だ。これは最早、帝国の信用の問題ではなく、版図内でくすぶっている反乱の兆しに油を注ぎかねないということだ」



 同じ頃、六皇子の居室でも似たような軍議が開かれてある。

 特別キレるような傑出した人物はいない。が、それぞれが悪だくみのエキスパートでもあった。

「さて、()()()の2いや3割は“バトゥワ”へ向かわせたか?」


「王の機嫌を損なわせないように、例の町の脱出口を教えておきました。仮に討伐隊が指揮されることがなかったとしても、彼らには甘い汁が吸えるよう手配済みでございます」

 出来た部下を持つ君主として余も鼻が高い――なんて口上を述べているが、結局のところは自分たちの利益のために他人を踏み台にしている連中の傷の嘗め合いだ。

 ラインベルクが仮に正当な理由で討伐隊を組するよう声高に宣言しても、取り巻きの貴族たちが難色を示し、彼の出した兵とともに挟撃、あるいは包囲殲滅するという作戦まで、()()()に授けていた。

 はじめから、ラインベルクという男を狙ったものだった。

 彼にとっては邪魔でしかない相手なのだ。

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