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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-707話 大魔法大戦 ⑲-

「逗留してひと月になりますが、どうですこの大浴場は?! ゲストでも滅多には入れない聖女様の聖水で満たされた大混浴場という解放感が、私の家で自慢のお風呂です!!」

 と、マーガレットは家族専用のお風呂をアリスに紹介している。

 が、その彼女は膝上まである湯船の中で仁王立ちをして、アリスの目の前にあった。

 揉みしだけば柔らかそうな瓜をふたつ、薄い茂みにくっきりと刻まれた縦のスジに目を奪われている。

 彼にしてみれば“肉巻ルイスき”の調教でよく目にしたワレメであるが、マーガレットのは何故か直視することを“恥ずかしい”と感じてしまった。

 頭の上のタオルをひっつかんで、反射的に彼女に投げつけていた。

「年頃の娘が、みっともない!」

 アリスは、湯船の中に潜水もぐって逃げた。

 自分自身でも不思議な事だ。

 見慣れてきて、今更感はあった筈だ。

 広げてしまえば、単なる肉と皮のつくりでチーズのような、ツーンと鼻に突く匂いやや、渋みのある味、潮の香りなど様々にあるものだが、マーガレットのだけは直視できなかった――“あれが...あいつの”と意識すると、下っ腹の当たりがぎゅっとキツく張る感じがする。

《他人の風呂で...たけるわけには...》

 と、別の事を考える。

 早く萎えろと、胸中は念仏ばかりを唱えているが、こういう時に限って目に焼き付いた()()は、忘れ難いようだ。

《ああ、よ、蘇るぅ~ナス!》



 メグミさんと対峙しているのは、マルだ。

 幻影でつくりだされた彼女マルは、はじめて出会った頃の“くのいち”スタイルだ。

 スカイトバーク王国“はじまりの街”。

 ルーカスと名乗って、彼女に勧誘の声を掛けたのが今も懐かしく思い出される。


 あの時は、場慣れはしていてもどこか、不安げに見えた。

 初心者ではないが、妙な雰囲気だったことはよく覚えている――異世界からの転移であれば、困惑しても当然かもしれないと、今でならよく理解できる。

 改めて、忍者スタイルでのマルを観察すると、衣装の奇抜さではなく機能性に目を開く。

 確かに短いスカートだし、腰を落として中腰に構えると中身が見えそうな感じだ。

 せめて、もう少し膝を折ってくれると――。

「おいおい...あんたまで前屈みになってどうすんだよ」


「うっさいなあ、もうちょっとで見えるかもだし」

 妹のパンツ見てどうするのかと野暮なことを問うは、月の城の青年だ。

 先ずは“色”だ。

 白ならよし、育て甲斐がある。

 暖色でも()()と及第点を与えられるが、寒色はダメだ。

 勿論、縞パンはまだ早すぎる――これはメグミさんの主観で、趣味の話である。

 青とか黒は、擦れてるから更生させるのが億劫だとかのたまった。

「うんなことはどうでも...」


「あ、ちょっと待って」

 その場にしゃがみこんで、対峙するマルの眼が点になる。

「もうちょい、開いて...そうそう、ああ、いいよ!いいねえ、うん...よし!()だ」

 幻影とは言え、頬を赤くしたマルは、霧の向こう側に隠れている術者の方へ腕を“バッテン”に交差して霧の中に還っていった。詰まるところ『心が傷ついたので、()に還らせてもらいます』という事らしい。

「おい、帰っちゃったじゃないか!!?」

 次に霧から出てきた“くのいち”のマルは、短パンになっている。

「ふぁっ!」


「うわっ...な、なんだよ急に」


「短パンになってる」

 出てきた虚像たちが、皆、短パンになったことは正直、驚いた。

 しかし、彼女はひとつの仮説を組むことが出来た――虚像マルは、メグミさんの記憶から、引き出された記憶を基に、投影されている幻影であるということだ。忍者装具をルーカスに見せびらかした時、マルのパンツを盗み見していたのがバレて、短パンになった思い出がある。

 本音でいえば、忍者装具からミニスカが消えて短パンになった時の絶望感は、メグミさんの心を粉々に砕くほどのものだったようだ。

 一時期、闇に落ちかけたが、今ではすっかり回復している――ような気がする。

「そろそろ、お前の剣速も鈍って来ただろ」


「舐めんな、クソガキ!」

 威勢だけはいいよな――と、呟かれた。

 霧と共に移動しているのも、何となくの感覚で掴んでいる。

 あとは、当りを付けていた方向へ確かに虚像のマルは、腕を交差して退出してみせた。

《そろそろ、かなあ...》

 塔の入り口は、今も変わらずに右手に見える。

 これも恐らくは、見える空間がねじれてるから()()()()()()という術者の願望みたいなものだろう。メグミさんの瞬間移動にも似た刺突の一歩は、時間跳躍めいたほどの速さで()を詰める技術である。感覚と視覚、思いっきりの良い踏み込みから発生していた。

 幻覚のせいで、その10分の1さえも進んでいないような、気がしている。

 もしも、そもそも踏み込んでもいないのだとすると――もう一度、振り返りながら周囲を見渡す。

 塔は、やはり右手にある。

 虚像が放つ、変則軌道クナイの攻撃を回避せずに受けてみた。

 攻撃は思った通り時間をおいて、3撃目でヒットした。

 最初の2撃はただのブラフだ。


 メグミさんにも、幻覚による精神攻撃は効きにくい。

 幻影は見えているというか、彼女の見たいマルが見えている。

 もしも、完全にタネが分かってしまったら、メグミさんは必ず、マルの全裸を想像するだろう。

 メグミさんは、自他ともに認める過激シスコン主義を掲げており、百合上等という変態であるからだ。

 まあ、自慢にはならないが、マルを独り占めにする為ならば、世界をも敵に回すことが出来る。

 頭の上のクロネコは目を細めて――

《本当に姐さんは、タフな人だねえ》

 と、念話が届く。

()じゃないけどね》

 と、メグミさんは、再び前屈みな姿勢を取り始めた。

 クロネコも背中へ這ったまま後ずさってスタンバイ。

「もう、パンツ見せねえぞ!」

 青年の声が空しく響く。

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