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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-673話 才知の攻防 ⑳-

 ここで北天七王国のおさらいといこう。

 北天七王国の北(内蒙古付近)に“超”という王国がある。

 地殻変動後に急激な高地化がすすみ、多くの人々が、険しい山々の中で居住を強いられるようになった地域だ。耕作可能な平野部が少なく、棚田などが用いられるも、国民を養うことができないため、他の六王国に軍事力を率先して差し出すことで、食料などを支援してもらっている状況だ。


 その南(吉林、遼寧付近)に“燕”王国がある。

 亜人の王国(黒竜江付近と半島あたり)に日々、悩まされる地域として共通認識されている。

 北天での地位は海軍国家のひとつであり、“蘇”に次ぐ軍事的な能力に秀でていると思われていた。

 これは近年の考察であるが、半島に興された“遼”という従属国に反旗を翻されたという。

 黒竜江は山深く、密林であり敵対的な植物も多い。

 この地域でも活発な動きが観測され、亜人、蛮族らの反抗戦が企図されていると言う噂があった。


 次に、中央(河北、河南付近)に黄天。

 北天京と帝都をかねる巨大な都市を持つ。

 北天という帝国の中枢という色が濃く、各王国の領事館などが立ち並び、各王国市民の憧れナンバーワンといった雰囲気だろうか。いや、少なくとも多くの寺院や学舎などが立ち並んで、国内最高の知識を学ぶことができる場所としても有名だ。

 ただし、物価も相当に高いのが難点である。


 新彊・西蔵・青海地域の砂漠と密林のアンバランスな魅惑の地域には、“蜀”という王国がある。国土の大半が砂漠化によって不毛地帯となり、かろうじて影響を及ぼす魔法技術によって、人々は点在するオアシス都市で生活の維持を図っている。

 北天でも屈指の陸軍国家でありながら、兵力の数的問題を抱えている。

 つまりは、人口問題だ――七王国中で一番、少子化傾向が進んでいる地域と言っていい。


 四川・陜西・貴州の豊かな自然を抱える、“安梁”という王国がある。

 王都は“洛邯”といい、国中の学生たちが目指す有名な学舎を抱える国だ。

 この国では、女性のとくに、はっきりとした物言いに驚かされる。

 北天全体から見ても、女性の地位は男尊女卑まで行かなくとも、低い傾向にある。が、こと“安梁”では男女平等がベースとして敷かれていて、むしろ女性を称えよなんてのも聞こえてくるほどだ。

 主に、中高年の女性からよく聞く。


 また、国王は婿養子である。

 この肩身の狭さが、女性の異常な男前さを引き出しているのではないかと、評価されていた。


 さて次に、“蘇”王国だろう。

 かの国は、湖南・広東・広西に跨るように国土が広がっている。

 海軍国家らしく、樹木などの資源に困らない。

 また、多くの海運事業で成功した、国際港を有しており恐らく、七王国内随一の金持ち国家だろう。

 そういう思いは自然と態度ににじみ出る。


 南欧諸国から買い付けた、海外の船舶購入や導入にも積極的というより貪欲に浪費する。

 また、国際貿易で得た外貨を“富の再分配”という帝国の約束事を無視して、消費する振る舞いも目立っている。現在は、北天の意識が拡大路線に向いているために追及されていないが、他六王国との溝は深まりつつある状況の途上だった。


 では、最後に――“斉”王国だろう。

 国土はそれほど広く大きくはない。

 山東・安徽・福建に根をおろした王国だ。

 海洋貿易の推進はであり、今、現在も“()()”で国力を無駄に浪費するよりも、その資金力、生産力で世界相手に交易で勝利すればいいと考える国の一つだ。“安梁”よりもやや、公然と“戦争反対”を政策に取り入れた国ともいえた。

 当然、月の城との衝突はおきているものの、粛清対象ではないようだ。

 これは、単純に月の城の人材不足だ。


 また、人手が少なく頃合いを図りつつ、およそ読みあい化かし合いながら、政策を出し惜しみしていたというのもある。若き国王の根気勝ちといったところだろう。

 その王国で、1000隻目の船が陸ドックから、浸水する栄誉に預かった。

 兄弟、姉妹の船らはまだ暫くドックから出られそうにない。



「さて、彼らからの催促はどうなった?」

 斎王は、自分と同じくらいに若い従者に問う。

 宮殿内で働く殆どの者たちが若い。何かしらの事情がない限りは年老いた男女の比率はゼロに近いものだった。これには理由がある――この国が戦争を反対しているものに起因する理由だ。この国は、黄天の二皇子反乱に対して、その当時積極的に鎮圧する側に回り、超軍と激しい市街地戦を繰り広げた。

 “張南市”とする小さな都市だが、住民をも巻き込んだ紛争に発展した。

 “斉”王国は、当時40代前後の兵士を数万の規模で投入し、賢者の放った魔法によってほぼ全滅させられてしまった。巻き込まれ事故であったが、月の城を信じ切った故の事故として王は隠居したのである。

「今も変わらず、使者を立てて、こちらの様子を伺っているようです」


「だ、そうだが……貴殿らは、彼らと何が違うと言えるのかね?」

 部下の返事を待ってから、向かいの席へ視線を向ける。

 ぱっと見は、色白で清楚な雰囲気のある大人の女性に見える。

 足首まで隠れる長いスカートと、浅く座った椅子の脇から零れ落ちた太い尾。

 ティーカップとソーサーを持つ手から鱗が見える――ドラゴンを彷彿とさせる雰囲気のもの。

「交易を……」


「それは、どういう意味で」


「貴国と独占で交易の路線チャンネルを開けておきたいのです」

 ブーケの向こう側に蛇らしい鋭い視線があるが、敵意はない。

 鬼人でも背筋が冷える相手がいる――魔王が従える化け物たちと、ドラゴン種だ。後者はすでに絶えているという話なので、今、斎王と対峙しているのは前者だ。

 魔王軍第二席、魔王水軍大臣にして司令官のアンセディリティ将軍。

 水龍の王いや女帝と呼んであげるべきだろう。

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