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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
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-37話 魔法少女マル ①-

「グエンの我儘を聴いて欲しいのだが――」

 ベックを前にして、カーマイケルは開口一番にそう告げた。

 当の本人はやや戸惑った雰囲気で、目を白黒させている。

「お前の傭兵団不信はよくよく理解している。それでも、グエンは俺にとって大事な奴だ。こいつの頼みであるならば、極力叶えてやりたいと思っている」

 ベックは、深く頷き――『大事なか、いいな...あれからお前も大分丸くなったんだな』と納得しているようなのだが、カーマイケルの方が戸惑ったような体を返している。

「お前は何を?」


「あれだろ? 俺が仲人を務めれば」


「そいう話は一切、していない」


「は?」

 ベックがぽかんと口を開けている。

「俺が言いたいのは、お前のところのマルという少女のことだ」

 マルの名が出た時点で、ベックは愛娘を守らんと身構えている。

 カーマイケルが『あの子と添い遂げる』とでも言おうものならば、獣人化して喉元に食らいついてしまいかねない雰囲気があった。

「また、お前は何か酷く勘違いをしていないか?」

 カーマイケルは冷静にベックを宥めている。

「お前に告げずにルーカスに切り出せばよかったかな...」


「どういう意味だ」


「理性ある会話ができるという事だ」

 肩を竦め、深い溜息を吐いた。

 ベックは昔の気難しさが微塵にも無くなっていた。棘がとれていい意味で丸くなっている。

「しかし、お前は本当に生き生きしているな。余程に水が良いと見た」


「ああ、いい仲間に恵まれたのさ」


「羨ましいな」

 優しく語り掛けるのは久しぶりな感じがした。

 カーマイケルは、ベックに再び告げる。

「マルという少女とパーティを組ませてほしい」


「それが、グエンのたって望みだ」



 背格好がマルと変わらない竜麟甲冑ドラゴン・スケイルを着込んだ少女は、ローブを深々と被った女の子を前に片膝をついて騎士らしく振舞う。

「お初にお目にかかります。ウチは、“緋色の冒険者”でリーダーを務めていたグエン・シートと申し上げます」

 緋色と聞いてローブの中の子が、大きく仰け反ったのをふたりは見逃していない。

 それでもグエンとカーマイケルは深くこうべを垂れている。

「私、“国境なき傭兵団”が総長代理・カーマイケルと申します。この度は、急なパーティ替えに応じて頂き恐悦至極にございます」

 と、謝辞を貰った。

 が、マルにとってはお尻がムズムズ痒くなる作法だ。

「やめよーよ、かたっ苦しい」


「しかし」


「緋色だって聞いて驚いたけど、君らはボクをどう呼びたいの?」

 マルは、被っていたローブのフードを取ると、ピンク色の髪をかき上げた。

紅玉姫レッドアイ? それとも、マルちゃん?」

 前者をくれぐれも呼んでくれるなよオーラを発している。

 余程のKYで無ければ、呼ばない雰囲気だ。

「ま、マルちゃんで」


「じゃ、気にしないでやってこー!! で、ちょっとやってみたい事があるんだけど...」

 彼女は、開幕一番に全魔力の解放を試してみたいと告げた。

 凡そ、元の世界でもそんな大それた、術式を展開した行為をしたことがない。

 いや、紅玉姫の遊撃隊の強みは、彼女の火力支援ではない。彼女が必殺の剣となって道を切り開くところにあった。

 その為に仲間は、熟練の緋色さえも手玉に取る見事なタゲ取りを敢行していた。

 一瞬でも紅玉姫を見失えば最後、手酷い火力が投じられてしまう。

 緋色の賢者や軍師は、その攻撃で受けた傷がもとで指や足を切り落とす羽目になった。


 だが、今、その恐るべき剣が仲間として存在している。

「開幕で一撃となると、天使たちのTAGタゲを一身で集めてしまわないか?」

 カーマイケルは呟く。

「だからタンクの子たちには、出来得る限りに時間を稼いで! 開幕2分で術式を展開するから」

 


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