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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-644話 バルカシュ攻略戦 ⑭-

「わが意に従え! 召喚サモン死霊騎士デスナイト!!!」

 ハティは自らの血飛沫を切り捨てた躯に掛けると、詩片のような詠唱で降霊術を行った。

 死した躯に魔界の魂を落とし込む召喚術式だ。

 媒介は、将軍自身の血である。


 ネクロマンサー同様だが、ハティの召喚後は眷族ファミリアに落とし込めるという条件がある。これは、複雑な命令にも対応できるという点だが、現界時間タイムリミットが厳しく設定されてあった。

 しかし、こと乱戦においては、デメリットである条件は無いのと等しい。

 要するに、将軍の魔力が枯渇しなければ、次から次へと新しい配下が数を増やして敵を襲撃するのだから。

 これほど厄介なものはない。

 さて、こうやって決死隊は、数的不利を克服しながら的中のど真ん中で踏ん張ってきた訳だ。

 疲れを知らない武者ゴーレムの方は、もっとオーパーツぶりを発揮する。

 もともとマルは自身の感覚、いや超感覚めいた野性的勘のようなもので、戦力不足と見抜いて用意した、2体しか作れなかったゴーレムである。

 材料さえあれば、まとまった数が欲しかったという代物だった。

 だいたいあの娘は、そう言う。

 ヨネ曰く――後先考えないで、その場の思い付きが多い困った姉です――と。


 武者ゴーレムは、急速なピッチで学習していく。

 それは“タマネギ頭”ゴーレムの集団戦習得よりも速いスピードでだ。

 その上、モデルベースは()()()()()と同レベルからスタートさせた。

 人から見れば、鬼は化け物であるからアップデート後は、背中を預けて戦う、スライムナイトに匹敵する化け物に成長していた――当のスライムナイトが頼もしい仲間として認識してしまったのだから仕方ない。

 彼らが、最終的に対峙していたのは、エルフの騎士たちだ。

 人間の兵士たちも懸命に戦ったが、結局は乱戦となると個々の身体能力がものをいう。

 帝国兵の中にも、武人ヒロイックまで昇華させたクラスの者もあったが、人間ヒトベースと鬼人オーガベースでは、そもそも差が開いている。

 埋まらなかったのだ。

 いや、それでもよく抵抗したと褒め称えるべきところだろう。



「来たぞ!!」

 中央広場にもう2体目の姿ベヒモスが確認された。

 北天兵の一部が対峙するも、()()()()の前に成す術もない。

「左右翼い展開させた2個大隊が壊滅!」

 伝令が、城内に臨時設置された指揮所に飛び込んでくる。

 この指揮所には、コメ家三姉妹の姿は無い。


 “蜀王国”の八皇子が指揮していた。

「まさか、瞬時に1000人もの命を奪えるのか?!」

 続々と、城内に流れ込む20万人だが、2体の化け物に食い散らかされるまでに、1日も必要ないという負のイメージが彼の胸中を過った――これが、恐怖である。

 胸の前で拳をぎゅっと握る。

 意味もなくではない。

 八皇子の義理の母が授けた“()()()”を間接的につかむように握った。

 実母は、市井の人だ。

 後宮に上がる前に病に倒れ、幼い皇子を一姫公主の母が、親代わりとなって育てた経緯がある。

 その母が、戦場へ行く皇子の首に斬りだした荒い目の石英を与えたのだ。

「生きるぞ!」


「は?」

 傍にあった将校らが、不意に呟いた皇子を見る。

 殆どが“超王国”軍の兵士たちだ。

 顔も名前も知らぬ者たちだが、北天の古い慣習として七王国の兵は、()()()()()の兵であるという考えを植え付けてきた教育法がある。

 七王国は合議の末に、帝国の方針ゆくえを決める。

 そうして、800年――七王国は争いを無くしてきた。

「生きると言ったんだ!!」

 真横にある将校の背中を叩いてきた。

 蒸せる兵を見て、やや硬い表情えみをつくりながら、皇子が涙を流す。

「生きるぞー!!!」



《獣王・三爪裂斬!!!!》


 ベヒモスのある戦場で幼女の甲高い声が響く。

 およそスキルが叫ばれる前に、いくつかの武技名アーツスキルが叫ばれていたようだが、鬼人たちは彼らの頭上に突如現れた、小さな影に今の今まで気がつかなかった。

 それは、対人兵器もそうである。

 肉袋の匂いと、動きに対して、機微に反応するようプログラムされた兵器であるからだ。


 戦技・()()()()は、五指のうち三指分の連続攻撃を放つ打撃系裂傷斬撃のことだ。獣王の戦技は基本的に、僧兵モンクや格闘家に継承されてきた、白兵戦闘術が基本だ。

 流派もいくつかあって、開眼グランドに達観できた者たちによって、新しい技が刻まれていった。

 当の獣王でさえ、戦場で新しい技を奥義書スクロールに認めている。

 その中のひとつであり、唯一の斬撃スキルでもある。


 猛威を振るっていた羊の頭上から、黒い稲妻のような軌跡が走り抜けて弾け散る。

 まさにベヒモスの頭が爆発した――振りかぶったハンマーで、巨大な西瓜を叩き割ったような感覚だ。

 逃げることも出来ずに、その場で腰を抜かしていた兵士たちの目にもその光景が焼き付いている。ただし、黒い稲妻の後は、ホワイトアウトによって、白い強烈な光が焼き付いたのだが。

 着地した小さな影は、地面に突き刺さった斧を抜こうと藻掻いている。

 勢いよく飛び出して、それこそ勢いよく叩き込んだ結果がこれだ。

「すみませーん!!」


「?」

 皆の目は、ホワイトアウトによって現在、一時的の白内障にある。

 が、声は聞こえる。

「たすけてくださーい!!!!」

 斧が抜けなくて、エサ子痛恨のミスである。

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