表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
69/2464

-35話 勇者と呼ばれた人の非日常-

 少年が故郷のために立ち上がった理由はひとつしかない。

 石化された幼馴染を助けるため、王都にいると噂された大賢者へ会いに行くためだ。

 干ばつや、水害のようにさも、当然のように現れた天災という天使の襲来によって、村だけじゃなく王都の外周に点在する集落や町々が襲撃されて、そこに住む人々が犠牲になった。少年の家族は、幼馴染の子だけである。

 彼女が身を挺して守ってくれなければ、彼もまた犠牲者1人として数えられていただろう。

 魔法による攻撃であるならば、大賢者を前にすれば容易く解放されるだろうと教区の神父は、彼に希望を抱かせて前に進むことを教えた。


 それが、彼にとって少々残酷な告知だったと認識していても、今、彼に希望を持たせることが最優先と考えた末の過ち。

 少年は身支度を整えて、村を発する。

 王都までの道のりは、13を過ぎた子供には冒険だ。

 持ち出した路銀や頼る大人も居ないのだから、心許なかった筈だ。それでも、彼の決意は揺るがない、幼馴染の少女――彼は姉のように慕い、彼女は母のように接し、互いに慈しみあったふたり――『ボクは、取り戻す』と心の中で呟き、声に出して誓った。



 何年前の記憶だろうか。

 夢だ――今のは、辛い思い出の最初の1ページ。

 彼がいや、少年が剣を手にした最初の記憶。

 そして、生きるために最初の殺人。


「主人、世話になった」

 カウンターに銀貨を5枚を置いた。

「もう、出るんですかい?」


「ああ、外に待たせてる奴らが居るからな」

 カウンター奥にいる主人へ声を掛けた。

 これから起こることを察知しているから、顔を出さない。


天上騎士われらを前にして、正面から挑むか? 小僧」

 2対の翼を持つ有翼人らの集団に囲まれている。

 マルチバトルでは巨人のような大きさで出現する天使たちだが、そのサイズは調整できる。

 2対と3対になれば、人型として行動するものも少なくは無い。

「っふ、正面から堂々と...か」


「気でも触れたか」

 眼下の剣士が陽炎のように揺らめいて見えた。

 既に彼は、抜刀して1対の有翼人を狩り出している。

 通常の物理攻撃は、天使には効果がない。魔法に対しても、全属性に対して1割から2割の耐性を誇る。正に無敵とも称される厄介な存在だ。地を這う魔王軍にとっても、天使との戦いは避けたがる理由のひとつだ。

 が、剣士の振るう二刀の攻撃――物理攻撃に1対の天使たちは、辛うじて対処するように見えた。

 2対の騎士たちは、次々と撃破する剣士の強さと、周囲の時間軸の乱れに違和感を覚えている。

「こりゃ、まいったな」

 人間っぽい反応をする2対の天使が屋根の上にあった。

 剣士の周囲は明らかに何かがおかしい。

 天使たちの攻撃は、剣士に近寄られた時点では無傷だが彼が離れると、ポリゴンが弾け飛んで消滅してしまっている。チートの類も考えられたが――屋根の上の天使は、左腕で魔術式紋様を書く。宙に浮かんだ小さな小窓から、剣士の動きと天使の消滅のログを追う。

 宿屋の周囲に展開した天使は、当初よりも大分数を減らしている。

「まいったね、こいつ...AIゴーストが壊れてんのか?!」

 独り言ちると、『GMコール』と叫んだ。


 周囲がぴたりと止まっている。

 空の色は異常すぎる、赤とも緑ともいえない淡い光があると思うと、黒っぽかったり白っぽく見えたりする不安定な感じだ。鳥や風で舞った木の葉さえも止まり、光の結晶体となって砕けている最中の天使までも止まっている。

 ただし、剣士と数人の2対と3対の天使だけは違った。

 動ける剣士を直視している。

「明らかにルール違反と思わないか?」

 3対の天使は、神名コードを上位三使と言った。

「...」


「AIが、ラグアタックするとは誰も思わん」

 剣士の恨みが籠った、睨む視線だけがその意志の強さを物語っている。

 ルール違反だとしても。


「GMコールは為された! 汝に我らが神の裁きを与えん!!」

 4体の上位三使が脳天に刺さるような声で歌う。

 神へ捧げる唱だ。罪人の悪を濯ぎ、魂を天上へ誘う精神攻撃魔法の神聖術として数えられる。

 さらに2対の天使は、中位三使として登録されていた。その彼らも上位三使の後を追う輪唱で奏で始める。人の耳では聞き取れないまるで、金切り声のような声が頭を精神を攻撃してくる。

 剣士は、握っていた剣を落とし、その場に膝を折って崩れ落ちた。

 耳を塞いでも届く天使たちの声。



 清々しい朝だ。

 見上げるとメガネのレンズみたいなシールドがある。

「何があった...」

 横たわるベッド周りがヒンヤリする。

 手に伝わる感触は、水というよりもジェルのよう感じにも思える。

「お目覚めかね?」


「?」


「いや、まだ横になっていなさい...リサイズはもう少しかかる」

 聞きなれない声だ。

 だが、不安が過る。足の感覚がないことに気が付く。

 いや、そもそも此処はどこだと。

「感覚は遮断してやれ、彼にはまだ酷だ」

 違和感いや、不安も一緒に消えたような気がする。

 声の主は、彼の横たわるベッドのシールドに手を乗せてきた。

「さあ、もう少しおやすみなさい」


「時間が来たら、おこしてあげよう...」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ