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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-617話 北バルカシュ海戦 ㉔-

 塩湖内の浮島に移動する際は、船が用いられる。

 陸からはもう少し北側へ“セレクトス”から、大小さまざまな島に渡る橋を通る必要がある。

 しかし、これではバルカシュ海の外縁をしばらく走り通さないといけない。

 人狩りと呼ばれていることを甘んじて受けている騎士団は、“アクタ”の港町から1本マストの商船を用意すると、“ウルジ”を目指した。

 1本マストの船には、漕ぎ手と乗務員で既に20人。

 客人ゲストとして騎士団が乗り込むには、とても1隻では足りずに5隻と船団を組む格好となった。それぞれに10人垂らず、馬10頭という配分だ。

 およそ帰りになると、狩りの成果で倍の船は必要になるだろう。

 帝国領内での三等臣民の扱いは、辛うじて()()ではないというだけで、大した違いはないとされている。帝国本土へ近くなれば同じ三等でも、さらに立場が激変する。しかし、外側はずれに住む人々は自らの手で自分たちを守る権利くらいしかない。

 城主の行いも帝国という組織のルール上かなりグレーであった。

 奴隷だからと言って、化け物の餌にしても良いとは、皇帝でも認めてはいないからだ。


 城主を公に避難すると、城主かれ自らがふんどしで顔を隠して、罵った相手を殴り殺しに行く奇怪な行動が散見される。これは、甲蛾衆から派遣された軍監の眼を瞑るところにある。

 しかし、ずっと報告しない訳にもいかず、仔羊の餌が足りなければ、領内の肉袋ヒトを与えてきたという件は、既にアリス・カフェインの知るところとなっている。

 そして、皇帝ラインベルクもだ。


 それでも、未だに城主になんら咎めは無いのは、城主かれがもう一人の皇帝の遠縁に当り、そして、ハイエルフという純血種だからだ――と、いう見方がある。



 “聖櫃”のふたりも“ウルジ”に向かっていた。

 “アクタ”で2本マストの漁船をチャーターすると、船賃に()()を振舞って、移動している。こちらとしては、そうそうのんびりして居られないという事情もあった。

 彼らには目的がある。

 皇帝からの依頼事でもあるし、総長からのもある。

 彼らは暇人を装っていた。

 旅行だと嘯いてもいた。

 そのどれも、これも人に会うためだ――彼ら“聖櫃の騎士団”が導師せんせいと仰ぐ人物にだ。



 行政庁の執務室では、同盟の話が仮契約されたところだ。

 マルの思惑通りに宝石貝ジュエリーシェルと穀物の取引は、搾取されている人々には好意的に受け入れられた。いや、特に()()()()()という言葉フレーズが功を奏したとみるべきだろう。

 バルカシュ海の地域は、かつて貧しい王国がひしめき合っていた。

 その時代から、領主たちによる搾取が連綿と続き、人々は歯を食いしばって生き抜いてきた歴史がある。それはこの渇いた大地に流れた血が証明している。


「では、合意の証としての契約金です」

 マルに渡された革袋を妹のヨネが紐解く。

 宝石貝だ――ザインの街で出土した石英を触媒にして、二枚貝を加工した人工宝石貝といったものが机上に広げられた。天然の宝石貝は、宝石という鉱石の内側に貝が、閉じ込められているものを指している。

 琥珀の中の虫のようなものだ。

 数が少なく、貴重である。

 貴重であるが、実際に本物を目にすることは無い。


 幻の王国が、交易品として地下世界で流通させているのも、人工宝石貝だからだ。

 歴史的に貴重ということであって、数が無いから交易品たりえない。

 後は、値崩れしないよう管理しながら流通させればいい。

 ま、もともとの産出国にとっては、傍迷惑なライバルが現れたことになる。

「商談は成立」

 と、一段落したところで、街中が騒がしくなる。


 “人狩りが来たぞー!!”


 なんて、声が通りに響いた。

 市長の顔色がみるみるうちに青ざめていった。

「人狩りとは?」

 今まで押し黙っていたハティが、硬直している市長に問う。

 彼の眼と耳には、肉袋ひとが縮み上がって、早鐘をうつ鼓動を捉えていた。

「その呼び名通りの野蛮な連中です」

 黒衣の騎士は、各地で人々を苦しめる厄介ごとを解決してきた実績がある。

 冒険者ギルドの評判よりも、旅商たちによって評価されている。

「帝国領のど真ん中で、公然と臣民を狩るものなのか?!」

 市長らは“我らは帝国の民ではない”と言い放つ。

 帝国の勢力圏下にあって、帝国の城、兵士が闊歩する基にあっても、市長らは首を横に振った『我らは一度も帝国の民として扱われたことは無い。いや、今現在も敵国の民なのです』と、訴えている。

「実に解せないが、我が国の大事な同盟()だ。今、ここで盟約を果たせなかったら...私は後に後悔するかもしれない」

 六皇子は、椅子の背に立てかけておいた剣を、腰に提げ直した。

 柄を掴み握り具合を確かめている。


 エサ子担いでいた戦斧を両手で掴んでいる。

「ふっ、皆も臨戦態勢が整ったといったところか...」

 少年は、剣士と槍使いに預けることとした。

 彼が『ボクは?!』と声を挙げる前に、剣士の胸にゲンコツを当てた皇子から託された。

「って、事でよろしく」

 剣士は、はにかみながら少年に微笑んでいる。

「この人大丈夫ですか?」

 槍使いの方が力量が上とみて、問うていた。

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