表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
640/2382

-581話 ヘラ島攻防戦 ⑤-

「大砲ですよね?!」

 部屋を移して、蘇人のみで会合を開いている。

 ただの監視塔だと侮っていたわけではない。

 高空にある()を頼りに、島の攻略案を考えていた。


 その報告の中に、()()()()は無かったわけだ。

 いや、突っ込んで問い質す行為さえしなかった。

「哨戒船から島までは、おそらく20kmもあるまい。島のどこからの砲撃かによるにしてもだ、射程は長く威力は凄まじい」


「しかし、当たらければ」

 皆は頷くと同時に、全員が唸った。

 当たらなければ問題ないと思う反面、斜めに発生した水柱の衝撃からすると、着弾付近は当たったも同然ではないかと思い至ったわけだ。で、あれば着弾範囲次第では、一発で船団が崩壊するということになる。

 密集すると、()()()必要の無い分狙いは甘くなる。

 それは砲台側の理屈だ。

 一発で、面制圧能力を持つ大砲ともなると、密集は避けなければならない。

 そうなると――。


「島側の防衛機能が気に成りますね」

 突出した船団を完全に沈黙させられなかった点は大きい。

 別室で文字通り、()()()で仰向けに倒れている賢者を思い浮かべる。

「仕事はしているが、」


「如何せんその精度が粗過ぎる。あれは性格か性癖か...」


「いや、それはどっちでも良い。ムラッ気のある将器の者などは履いて捨てるほどみてきた。問題は、喪失して捕捉きれなかった敵船団が健在かどうかだ。見た目通りの戦力なのか、それとも島には未だ温存された船団が――」

 ふと、船長が天井を見上げた。

 蘇人の皆も同じように見る――高空からの“目”から、定刻の報せが無い。

「どうしたことだ?」


「どうした...いや、どうして“目”が半日も報告を寄越さない?」

 船長の呟き。

 自問自答を繰り返す。

 高空より監視するシステムは“少年軍師”が考案したものだ。

 魔法士を飛行魔法フライで空に上げ、彼らの広範囲するど大雑把にぶい感知能力で網を張り、敵性勢力と味方の識別を行うという人海戦術レベルのレーダーシステムがそれだ。

 その性能によって、北天は常にひとつ先の未来を見てきた訳だ。


 が、島からの砲撃以前から、魔法士の報告が途絶えている。



 ヘラ島監視塔の櫓には、魔法士ほ二人組がある。

 ひとりは魔法猟兵団という部隊に所属する現役ばりばりの猟師だ。

 帝国では、魔法敵性のある猟師を訓練して、前哨狙撃兵をつくりだすプログラムがある。これを経た兵士が島の監視要員に約小隊分配置されていた訳だ。

 その隣は、スポッターの魔法士だ。

 もともと、同島に観測員として配置されていた者だったが、祖父さんのみが猟師だったというだけで、猟兵に行かなかった稀有な少年がある。

 背筋をまるめて俊敏なネコのように屈みながら、遠眼鏡の先を見ている。

 魔法士の少年は、見たところ17くらいだろう。

 だが、小柄で華奢な雰囲気がある。

 狙撃銃の調整をする猟兵は、傍目に映る小さくてやらかそうな臀部が気になった。

「先輩の腕、凄いですね!」


「そうかい? 君のサポートもまんざらじゃなかったがな」

 一度、気になるとなかなか目を放しにくい。

 上をみて、右を見て......そして、もう一度彷徨った挙句に左の尻を見るのだ。

 喉が鳴る。

 丸くて小さな尻にだ。


 女っ気がないと言うのは嘘だ。

 男女に関係なく兵隊の中に異性は存在する。

 股を開くか、或いは突き立てられるか、その機会はいつでもかという状況の次第ってだけだ。

 性別上は()でも、種族がゴリラでは、流石にやる気は起きないだろう。


 それは、女性側でも同じなのだが脳の作りが違う。

 欲求まあ、いわゆる性的という点の欲求は代用が出来る。

 興奮のすり替えが出来るので、()()()()ことを悦とすれば自己の欲求は満たされる。ただ、本能的にタネを搾り取って()()()()は別だ。

 これがゴリラみたいな強靭なのであれ、尚良い。

 軍隊のような非日常的な世界の女は、街の中にあるものとは別であるというだけだ。

 猟兵は、小首を傾げ、左の臀部を優し気に見つめていた。

 光の悪戯だろう。


 太陽は南に差し掛かる。

 監視塔の縁から差し込む光が、尻肉の表皮を薄く照らすように包んで見せている。

 丸くて柔らかな、桃尻に喉が再び鳴った。

「警戒すべき敵の気配が無くなりました」

 少年は遠眼鏡を顔から外して、深くしゃがみこんだ。

 そのまま、猟兵の方へ身体を開く。


「!!!!!」


 少年の声にも成らない声があがる。

 猟兵が差し出した大きな手が彼の球根を掴んでいる。

 しっかりと収まるように、手のひらの奥に沈み込んで掴まれていた。

「ふむ、やはり思った以上に小ぶりだな」

 何が――少年の目端に小粒の雫がみてとれる。


 球根の緊張を悟られまいと、少年は胸中で別のことを考える。

 兵舎の仲間の事だ。

 少年兵は同期の中で一番、小柄な兵士だ。

 17になって2年目の兵士生活。

 魔法士には、一般兵士と違って筋骨隆々というほど強靭な兵士は居ない。

 だが、それでも身体の密度の高い者と、低い者――所謂、熊と兎なんて体格差は生まれるものだ。等しく同じということなどはあり得ないからだ。

 と、なると当然。

 少年兵は、夜伽の対象者となる。


 平静に、息を整え、兵舎の――。

「そんなに緊張するな、お前の尻がな...綺麗だったんで。まあ、ついな」

 と、猟兵は球根を手放していた。

 顔を朱の染めて抵抗する訳でもなく、ただじっと()()()()()()()()()()()と、呟いているのを見た猟兵の方が、罪悪感を感じてしまった訳だ。

 彼が夜ごとに何をされているかも、理解してしまった。

「え? し、しな...」


「するものか。俺は鬼畜じゃない...いや、すまない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ