-27話 国境なき傭兵団-
悪い噂しか聞こえてこないクランと言えば、“国境なき傭兵団”という連中だろう。
予告なくイベントの復刻が配信されたランペルーク王国に、20人をひとつの大隊と呼ぶ集団をすでに5組も送り込んできた彼らは、マルチバトルの発生そのものを独占するつもりでいた。総勢300人を超える大所帯にして、最強を自負するクランとしての意地とでも言うか。
或いは相当の悪意をもって臨んでいる。
現在、総長は不在。
リアルが忙しいらしくINもしていな様子で、総長代理という男が勤めている。
およそ300人の頂点にある実力とステータスともに最強を二つ名にもつ、カーマイケルといった。
正規クラスは、聖騎士で修め、補助職業或いは裏稼業では黒騎士を得ている。肉弾戦において無類の堅さを誇り、二刀の剣捌きは鋼鉄をバターのように刻むという。
また、黒騎士の固有スキルには、取得後MAX扱いで肉体強化4倍に達するチートっぽいスキルが存在する。デメリットは、発動後120秒間“呪い”によるダメージがHPを襲い続けることらしい。
詳しいことは攻略サイトでも不問とされている。
これは、弱点になり得るからだろう。
まあ、そういうカーマイケルは第一陣の100人と共に現地に入った。
ベックと兄弟弟子だった彼も、苦い思い出をこの国に持っている。
クランは若かった。
攻略組と鼓舞してきたが、あのタイミングのイベント参加はいくら何でも無謀だったと言わざる得ない。
世界各国から選りすぐりのクランが参加したが、日本鯖として面目を保ったのが“国境なき傭兵団”ただひとつだ。
――あれは悔しい思い出だ。
「次は、俺たちがすべてを取る!」
強い意志と、闘志がそこにあった。
◆
剣士は、別の場所でイベントのオープニングを見ていた。
王城の南塔にある開かずの間だ。
オブジェクト破壊を強行すれば、封印された扉さえも壊せることは皮肉にも、“国境なき傭兵団”たちが示している。但し、その際の判定はかなりシビアなものだ。そもそも、道理で進めれば封印は、鍵で開くのだ。無理に壊さず謎を解いて、導かれるままに開けばよい。若しくは時間経過とともに開く場合もある。
まあ、強行するのは短気者だろうが。
手持ちの武器で扉を幾度か攻撃してみる。
オブジェクト耐久値に変化はなかった。
「思った以上に硬いな」
ひとりでこれを破壊するには困難だとわかると、方法を変える。
扉の周囲の壁を持ってきたハンマーで殴ってみた。
耐久値は明らかに減少した――が、プログラム管理者が見たら泣くに違いない。
まさか扉を見て壊す対象を壁にする輩は居ないだろう。
ダンジョンにきて、部屋に入りたいから横穴を空けて移動していくような発想だ。
まあ、これで彼は部屋に入ってしまった。
罠の類はなく、部屋の真ん中に宝箱が鎮座されてある。
「これだ、この装備さえあればこのイベントは俺の物になる」




