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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
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-24話 お菊さん-

 ベック・パパはマルの部屋の前で非常に戸惑った表情を浮かべていた。

 吹き出しアイコンは“(^д^;)”みたいなのが浮かんでいて埒が明かない。

 ルーカスの方は、潔いと言うか意に介せず、普通に『はいるぞー』と言って中に入っていった。

「あれ、パパは?」


「ああ、戸口で固まってる」


「何で?」


「あー。耐性が無いんだよ、女の子の部屋に入るのがさ...」

 マルは、ルーカスのしれっとしたアイコンをじーっと見つめる。

「何?」


「ん...指導官ルーカスは戸惑わないの?」

 マルは不思議そうにしている。

 これは、彼女の天然。

「何でだろう? 気にしたことないや」

 淡白な返事だった。

 それよりも、バルコニーの黒い生き物を中に運び込むことが重要と、ルーカスは窓枠から身体を乗り出した。ソコにあったのは――。


「お菊さん?!」



 瀕死の状態になっているボロボロの冒険者は、夜桜衆というクランに所属する“お菊さん”だ。

 ザボンの騎士とは、同じPKKを生業とし、ちょっと仲のいいクランでもある。そこの構成員がこんなになっていることの方が驚きだった。

 戸口でひょっこり半分顔出しているベック曰く。

 数あるクランの中で一度は絡んでみたいトップ10に入るという。

 いや、基準が良く分からないので指導官ルーカスの解説のほうを採用する――要するにクラン長をはじめとする全員がリアルでも女性で構成された、対人メインの攻略者だという。マルにとっては、これもピンとはこなかったが、要するに実力者なのだと言うことはふたりの真剣?な眼差しで理解した。


 ところで――。


「パパは、あのままこの部屋に入らないで...あーしてるつもりなのかな?」

 マルがルーカスに問う。

 ルーカスは傷ついて黒くなったお菊さんの衣類を洗濯に出すべく集めている。

「ねえって」

 振り返ると、お菊さんが着てるもんを指導官ルーカスにむかって投げてる。

 その衣類をやや半キレ状態で集めるというコントをしている。

 ああ、もう着てるインナーって、ブラジャーとパンツしか残ってない。

「こら、痴女が!! それ脱いだら瀕死だからって容赦しないぞ!」

 集めた衣類をその場に落として憤慨。

 それを見て、息をするのも苦しいのにクスクスと笑っている。

「あー、痴女はやだよー」


「ルーカスさあ、この子だれ?」

 お菊さんがマルを指している。

 『さっき、ポーションあげたじゃん』って、マルがあきれた表情を浮かべ『もらった人は、ありがとうって言うのが礼儀なんだよ!』がっかりしている。

「うちに来た将来有望株だよ」

 『ええ?! 有望株なのー!!』って喜ぶマルを他所に、お菊さんは無反応な雰囲気だ。

 もともと彼女の雰囲気は掴みにくい。

 こうして動けない身体でなかったら、特徴的な特徴さえも煙に巻いてしまうだろう。

 そういうスキルを有している。

「ルーカスが見つけたんだ?!」


「ああ...」


「へーなるほどね...っまあ、身体も心も、んー育て甲斐がありそうだもんね」

 と、幼児体系のマルを頭からざっと舐めるように視姦する。

 これは悪戯だが、マルに対して“観察スキル”を使用して外見特徴を盗み見している。

「それは止せ、君の悪い癖だ」


「まあ、いいわ。貴方ルーカスがいうのならね」

 咳き込みながら、身体を横に倒す。

 傷が癒えにくい。

 マルがヒーラーとしてお菊さんの身体を診る――呪いの可能性もあるけど、似た雰囲気だと毒かもしれないと告げた。が、お菊さんは逆に『毒への耐性は十分に取っている。忍者くのいちとして物理攻撃耐性は、普通のファイターよりも高い』と豪語していたが、その耐性を上回るような毒だろう。

 彼女の症状への対策として、マルが召喚呪文を唱え始める。

 もごもご口ごもり始めた。


「...最上位召喚魔法マキシマム・サモンマジック罪喰ギルティーバード! かの者の災いを食らえっ!!」

 お菊さんの身体を包み込むようなデブっぽい鳥が顕れると、その場に座り込んで毛繕いをしている。

 マルの自信顔。

 戸口からひょっこり半分のベック・パパ。

 脱ぎ散らかしたマルと菊さんの服を集めるルーカス――彼は、この状況を気にしていない。



 鳥はやや半透明な体色をしている。

 その中で胡坐をかいている菊さんがいる。

「ねえ、これ未だ終わらない?」


「いや、そもそも何があったんだ」

 ルーカスが遠巻きから鳥をにらんでる。

「この子は悪い子じゃないよ、いい鳥なんだよ」

 と、マルが言う。

「いや、それは...悪いスライムじゃないよでは?」

 戸口のベック・パパだ。

「いい加減、中に入れよ!」


「いあ、女の子の部屋だぞ! 男の子には禁断のだな」


「知らねーよ! いつの時代の中学生だ」


「だってさー」

 情けない声を出した。

「パパー、パパー」


「ほら、娘が不安そうだぞ!」

 マルは、恋しそうに泣いてみた。

 ルーカスの悪知恵だが。

 それでも戸口から動かない――と、いうのもベッドの上で胡坐をかいているお菊さんの視線が痛い。『お前はこっちに来るな!』という刺々しい視線だからだ。

 で、結局。

「俺には無理だー」

 って、彼は涙を流して戸口にいる。

 その廊下を行き交う他の冒険者には、このパーティが変という“つぶやき”が今日一日を駆け巡った。

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