-19話 スライムは見た!-
ダンジョンの入り口には、失笑ものの変な像が向きも、数も、並びさえも無視して、無作為に陳列されている。如何にも怪しさ満点の構造を、どういう理屈で冒険者が訪れるのか理解に苦しむ。
スライムは、入り口の境で頭を抱えていた。
いや、そもそも粘体が全体で彼のどこに頭があるのかという疑問が――。
スライムはヌメヌメと移動を開始する。
先ずは、同属性の生物を探索する。
目?を皿にして痕跡を探った、ナメクジの粘液を感じられるが、仲間のではない。
スライムの独特なテカりが少ない。
まさか天井かと見上げ?てもその足跡さえ見当たらなかった。
いや、まさか日差しの差し込みやすい入り口付近に低級のスライムが居るはずないかと気を取り直して、ベムは、静かにダンジョン奥へ進んでいく。
ダンジョンの造りは、三層に分かれていた。
上部構造は、手彫りに似た雰囲気で増築した形だ。
この入り口は、内部構造よりも新しいので管理者が掘って造成したもののようだ。
土肌や削り、掘削痕が生々しく残っていて興味は明後日に向く。
しかし、二層目から煉瓦にちかい素焼きで壁や床、天井を敷き詰め特に頑丈さを誇る。恐らく、数百年前のものだと思われる。何かしらの問題で埋没した可能性があった。多分、遺跡だ――スライムでも物知りじゃない『マル様ならお分かりになるかも知れない』とスライムは八重歯をきらっと光らせて爆笑する少女に思いを馳せた。『あ~ あの方に抱きしめられたい』とか不純なことを過らせたかは不問としよう。
三層目でそれまでの様相をがらっと変えてきた。
完全なる石畳だ。
年代も相当に古い。
間違いなく、どこかの陵墓に違いない。
ずぅーんと思い空気と、湿気、いや悪寒だ。
暫く角を曲がる度に、左右を確認して移動した。
同属のスライムには出会わなかったが、ジャイアント・アントや歩くキノコには出会い、彼らに事情を聴く事が出来た。一応、ダンジョン内にはかつてミノタウロスという雄牛がいた。が、引き抜きで彼は転職していった。
その後も多くの魔獣が住み込みでダンジョンの主を張ったが、長続きはしていない。
現在は、ゴーレムが暫定的なダンジョンの主であるという。
『なんだ?! その寂しい陣容は!』
と、スライム・ベムが口走っている。
『よそ者か』
ベムの背中?越しに声を掛けるものがいる。
振り返ったのか、反り返ったのかは定かではないが、ベムが視線を向けるとそこには宝箱があった。
『たから?』
『お前は、アホか』
宝箱の蓋がぱこっと開くと、獣の目がスライムを見つめている。
まるで豹のような雰囲気さえある。
『ミミックか!』
※13話に戻ると、繋がります。




