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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-454話 イズーガルドの反撃 ④-

 メゼディエ城塞では、いくつかの班に分けられた。

 マルの一行には、灰色の賢者が同行することになった。

 と、いうより第一席アロガンスが案じて、“コメ姉妹”に危なっかしい賢者を預けたいというかたちだ。これは提案という名の命令にちかく、賢者もその気になったので預け先の不平や不満は、受け流そうということになった。

 まあ、当然、ふたりが拒否したとしても、誰もくみ取ることは無かった。

「ど、どうも...お世話に...」

 賢者がいつものようにフリーズした。

 が、おそらくは長い口上のセリフが続いているに違いない。

「...で、作戦ってどういう?」


「うわ、唐突すぎて...どうしよう?」

 マルがメグミさんを見上げた。

「ちょ、私に聞かないでよ」

 賢者だけ、別の時間軸にとらわれている感覚だ。

 そこが面白いといったのは、魔王だけなのだが。



「作戦という作戦はない――メゼディエ城塞の周辺回復は、蜥蜴族が責任をもって行うという点において、確認が取れたみたいだよ。ボクらは橋頭保を作る!」


「作る?」

 確かに“魔法使いは遊軍”という話は出た。

 男たちの決める作戦会議の輪の外に居た、メグミさんにとっては単語しか結局、聞き取ることが出来なかった。そもそも、“コメ姉妹”はエルザン王国から派遣された、使者を兼務する援軍であるが、『女や子供には、政治は向かぬのだ!!』とする旧い考えの貴族たちによって締め出されてしまった。

 そういえば、モテリアール卿の娘・キャスも騎士という身分でありながら、身分と扱いが雑なようなところがあった。

 恐らくは、皇女殿下も似た扱いを受けているのかもしれない。

 殿下は後継権を有する女性である。が、上に兄が三人もいることから、公務はおよそ兄らが行い、彼女はどこかの王族から婿を貰って、子を産むのが仕事だと言われかねない。

 実際、その兆しはいくつか見れた。


「そんな話、して無かったよね?」

 マルは、会議に出たメグミさんから迫られて頷いている。

「うん。無かったと...いや、ボクは知らないよ...」

 彼女は、“緋色”のグワィネズから提案されたと、種を明かした。

「それ!」


「うん、らしいね...“緋色”に与えられた仕事らしいけど。冒険者の使い方も分からない上層部れんちゅうとは、もう一緒に仕事が出来ないって...殿下が嫌気がさしたって拗ねちゃってて。で、何ならボクたちが手伝うよって――話したらさ」


「それはね、直接...お願いができない、あの人のやり口じゃない?」

 呆れたメグミさんがいる。

 マルちゃんはお人好し過ぎよ――と、零した。

「でも、これでボクらも自由に動けるし、気心に知れた仲間とも行動できる。“緋色”の構成メンバーは、別れた時から変わらず、剣騎兵が50人。隠者は居ないけど、デバフ魔法が得意な妖術師ソーサラーが、100人もいる。それに...」

 天幕の入り口を指さした。

 外をバスケットを持って歩くゴーレムがあった。

「“タマネギ”ちゃん!」


「...そ、そのゴーレムが12体も健在らしいから、少し纏まった数を持たせれば...ね」

 スライムナイトらは身支度を整え、怪鳥ゴーレムの格納庫へ入っていく。

 作戦に使用する怪鳥は2体、残りは補給物資の運搬に従属する。


 飛竜と黒竜は、城塞の防衛に回ることが決定した。

 というより、かなり強引に城塞の大臣たちが、“コメ姉妹”を説得して実現している。

 彼らにしてみれば、ドラゴンは手元に置く政治的理由がある。

 国内外の睨みとしては十分すぎる戦力だった。

「他のゴーレムは?」


「技師たちには指示を出してあるし、仮に同盟国としてあるまじき行為が発覚すれば、それはイズーガルドという国が世界から見捨てられるだけ...って脅しておいたけど」

 賢者がじぃーっと、マルを見ている。

 マルも、その視線を変に思って彼を見る――と、スバーバルは素早くそっぽを向いた。

《この人、何がしたいの?》



 海面をギリギリで飛行する、怪鳥ゴーレムは時折、飛沫を上げて波たつ海水を被っていた。

 嘴から丸くて太い舌で、ぺろりと舐める動作しぐさは、かなり動物的なものだ。

《降下準備をお願いします》

 格納庫内は安全燈が灯って、オレンジ色に照らされている。

 尻穴のハッチが、ゆっくりと開く。

 ハッチの縁に立つと分かるが、相当な速度で風を切りながら飛んでいる。

《降下後は、本機は急上昇を取り、目的地上空で待機します》

 風の音が変わる。

 スライム竜騎兵らが50匹は、それぞれのヘルメットを叩いて気合を注入。

「では、諸君」

 背中にコンパクトなバックパックを背負った、歩兵が飛び出していく。

 超低空降下作戦――古代文様エンシェント・トークンが刻まれた、“石”を持って飛び降りた彼らは、魔法の発動によって自由低飛行パラグライディングを楽しんでいた。

 彼らが降り立ったのは、マルマラ海の中に浮かぶ“マルマラ島”。

 第一席らは二手に分かれ、対岸のシャルキョー港とクンバ港も確保している。

 海岸線はほぼ掌握した。

「...どうやら脱落者なく上陸は成功したようだな?」

 隊長のスライムは、ひとつの難所をクリアしたと安堵した。

「この後は?」


「島内の重要拠点を取る。確か、航空偵察では島の北側に街がある。その街を見下ろす形の城塞を確認しているから、これを攻略すれば、我々は姫さまをお呼びできる寸法だろう」

 隊長のセリフに皆が首を揺らす。

 理解できたようだ。

 スライム竜騎兵らは、道なき道の山へ歩を踏み出した。

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