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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-372話 北アフリカーナ多島海のハイエナたち ⑧-

「交易の仲介を貴国が?」

 ケンタウロスは、椅子には座れぬので卓上の縁に腹を寄せて立っている。

 一堂は、不思議そうに馬の胴体部分をみていることが多い。

 本日は、いつも以上に尻尾を振っているような気がする――と。


「ええ、魔王()()の最初の使者が来られた時は、政変真っ最中でしたので...驚きました」


「賢人殿。これをどう捉える?」

 騎士王は、ホビットへ話を振る。

 アレクドロス共和国の執政官を正面に直視できる賢人かれは、訝しむ。

「半々といったところか...」


「半々とは、帝国の地中海進出に対するけん制。魔王軍の跳梁跋扈を赦す危険か?」


「単純な話であれば、その程度宜しいでしょう。現在の“世界”が魔王を召喚したのですから、反帝国を掲げる者は、魔王と協力することが求められるわけです。魔王に征服欲が無いのであれば...と、条件が付く訳ですが。そればかりは、魔王本人から胸中の本心を問う外ないでしょう。しかし漠然と、“世界”がなどと言いましたが、本当にそんな力があるのかいや、働いたのかを観測できない以上は――」

 賢人は現状況を語る。

 それぞれの国の、それぞれの宗教から見て“世界”とは、信仰の対象のことを差す。

 ホビット族の信仰は、自然に対してだ。

 特定の神を持たない――それぞれに神が宿ると考えていた。

「啓示の話か...確かに単純には語れるものでもない。魔界の主人が、我らの世界に干渉してきたこと...その事実こそ、本来は光と闇の戦いである。その理屈ことわりでいえば、帝国の初手は確かに妥当といえるものだ。反魔王同盟と、世界評議会の発足で各国をひとつにまとめ、それまでの事実を有耶無耶にできる」

 騎士王の下にも帝国から、反魔王同盟参加を促された時期がある。

 小国だからと礼を欠いたものではなく、帝国子飼いの英雄“黄昏トワイライト籠手ガントレット”が使者に立つという異常なものだった。

 地中海から参加した国々は、大小に関係なく兵を拠出した。

 その船団はおそらく史上初の規模であったように記憶する。

 18になったばかりの4年目の王、マーメイド族の騎士王の戦デビューは、対魔王第一次遠征による。


「そうか、騎士王ヌシも参戦していたのか」

 人狼族()“第一次”に参加したクチだ。

 海戦を挑んだすべての国が魔王の艦隊の前に膝を突かされた。

 圧倒的な兵力差と、歩兵差を骨の髄にまで叩きこまれては、“二次”の募集に応じる国は少ない。

「私は、捕虜になったクチだ」

 歯を食いしばった物言いで応えている。


 海戦は――アイスランド沖で発生した。

 既にアイスランドに橋頭保を得ていた、魔王軍の上陸部隊が数十万規模で展開していたからだ。

 地中海艦隊と方面軍的な呼び名にされた船団は、多少、それぞれに不平不満があった。各国の“王”が指揮する船団なので“誰が一番、偉いのか?!”という下らない事でギクシャクしていたのだ。

 おそらく、この上下関係というのも敗因のひとつなのだろう。

 世界の陸地は、神代より以前と比較すれば恐らく半分以下になっている。

 天変地異と地殻変動によるからだが、逆に海が広く大きくなった。

 船が自ずと発達する土台は出来ていた。

 それでも、魔王水軍と対峙した時の絶望感は表現しにくい――騎士王曰く、真っ白だという。

「...あれが、魔王軍なのだと思い知らされた。西欧戦線では膠着している状態のようだが、第一次遠征で魅せられた圧倒的な暴力が地上では形を潜めるなんて――」


「騎士王は、捕虜になったというが差し支えなければどのような待遇を受けたのだ?」

 執政官の単純な疑問だ。

 筋肉バカなとこのある女王だが、心に傷があるような雰囲気も感じられなかった。

「丁重な持て成しを受けたよ...それは、捕虜になった将軍や兵に至るまでだ! 皆、アイスランドの収容所に入れられたが、非人道的な扱いを受けることもない。むしろ、各国の習慣を聴取した上で、作法を順守して応対してくれたほどだ。不平不満が起きることもなく...私たちは帰国を手配された」


「それのどこが屈辱的なのだ?」


「お前はバカか?! いや、騎士長殿を貶していないぞ」


「人狼王殿、振らんでも良い」

 ケンタウロスの目は笑ってない。

「第一次遠征の将兵は、魔王軍にとって初めから敵でもなかったという事だ。客人を持て成した――と、騎士王は告げたいのだろう。これの意味を理解したものは少なくはない筈だ。西欧戦線で、西欧諸国が魔王軍とともに轡を並べているのも、恐らく初手の対応から得た信頼だとすると、魔王かその配下には人を操ることに長けた者がいると理解できる」


「そういうものか...」

 妙によそよそしい。

 遠ざけるような雰囲気だ。

 人狼王の鼻は、彼の態度が急変したことも嗅ぎ分けている。


「時に執政官?」

 その急変を確かめるべく動く。


「?」

 目が泳ぎ始めた執政官は、椅子の背にもたれ掛かりながら“茶”を催促する。

 喉が渇いて仕方ない。

 騎士王ら地中海艦隊の捕虜が解放された時、アレクドロス共和国は一兵も派遣しなかった。

 もっとも、そんな処ではなかった。

 政変ではないが、国内が乱れて軍を派遣する余裕が彼らには無かったのだ。

 だが、それが不幸にも魔王の手口をしらないでいた経緯になる。


「第三次政変の最中に魔王の使者が来たというが、具体的にはその後...何があった? 帝国に難破船を売って、ひと儲けをしたとも聞いたが?」

 執政官の動揺で皆が納得する。

 懐柔は既に成されたのだと。

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