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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 若葉マークの冒険者
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-05話 くのいち・マル-

 お子様ランチに下鼓を打った彼女は、メッセージに記された闘技場を目指していた。

 初心者支援プログラムの凄いところは、重要施設をマップ上で検索すると、その後に施設までナビゲートしてくれるところにある。至れり尽くせりだけど、これに慣れちゃうとダメな人になりそうで怖い。

 自分で調べて、マップの読み方・歩き方を学ばないと、生き残れる自信を失いそうだ。


 まあ、しかし。

 彼女は無事に5分遅れで施設に到着した。

 会場に入ると、先ほどの冒険者が何かレクチャーしている場面に飛び込んでしまった。

 今や会場の注目は、遅れて来た女の子に向けられている。


 髪の色は、桃色。

 アホみたい癖毛が2本、ふわふわしている。

 身長は150もない小柄な子で、色白、ぺたんこ。

 もじもじどころか、堂々と『遅刻しちゃったー』と、入室してきた赤い瞳の子である。


「参加ありがとう」

 指導官は淡泊に接してくれた。

 が、指導を受ける仲間たちはいい顔をしてくれてるとは言い難い。

「先にも言いましたが、先ずは、自分のことを知ることが重要です!」


「最初に将来のイメージがありますよね!『ボクや私はこの世界で、こんな冒険者になってやる』っていうイメージです! これは重要です。組わせるスキルによって、どんな職業の中でも特化した人物になれます」

 軽装の冒険者は、素早く自身のセット内容を変えた。

 職業は騎士だ。

 獲物は刺突剣で、馬上で使用されるカイトシールドを持ち、俊敏なイメージの騎士。

 見た目以上に強烈な一撃を放てる雰囲気だ。


 生徒の殆どが歓喜に沸いたし好奇の目で賞賛したが、遅刻した彼女だけが冷静に、騎士の指導官を値踏みしているような視線をむけていた。指導官にもこの『視ている』が伝わっている。

「皆さんも、ご自身のステータスを確認してみましょう!」


 彼女は、もう一度、ナビゲータに教わった方法でステータスの確認を行った。

 HPやMPの総量を顕すグラフが見える。左から伸びて右いっぱいまで。すると、何本か同じグラフがうす暗く重なっているように見える。


《それは、それぞれに全部で5本ありまして種族や装備アイテム、ボーナスによって変化しています》


 と、珍しくナビゲータが話しかけてくれた。

 彼女のHPは3本、MPは5本というグラフ。


《ステータスには上から、『冒険者プレイヤーの名前』『HP/MP』『スタミナ』

『STR』『DEX』『INT』『VIT』『MND』と、基本項目が並びます》


 ナビゲータは、続ける。

 指導官も、ステータスを確認している新米たちに、

「『HP/MP』のグラフは、それぞれに最大で5本存在します。総量は約2万で、これは選択した種族と装備するアイテムやスキルの組み合わせでも変化します。最近では、装備レベルのボーナス値が大きく影響しますね」

 と加えている。


「『STR』はキャラクターの力強さを表現しています。また、得意とする装備品の条件にも影響しまし、武器アイテムやスキルの物理的な攻撃力にも影響するので覚えておきましょう!」

 と、綴った。


 彼女は、自分のステータスから名前を今一度確認していた。

 名は――マル・コメ。プロフィールのタグに移り、種族はスライム・ロード。

 外見種族スキンが人間を選択し、性別は女性と表示してある。

 マルは、ようやく自分を取り戻した感じがした。


 さて、初歩的な講義が終わりそうなあたりで、集団行動のレクチャーが始まった。

 しかし、マルは暫く自分のステータスを眺めていた。

 若干の違和感を覚えたからだ。アイテムバッグと装備欄のギャップとでもいうか、何故か自分にもクラスセット・アーマメントがありそうなという予感から、指導官のレクチャーを無視する事20分。

 指導官から見て左の輪の外で、クラスチェンジしちゃう問題児が出現する。

 突然の出来事に若葉マークの冒険者がどよめき始めた。

「お?! さえない装備から『くのいち』になった!!」

 と、大はしゃぎなのは、マル本人である。

 ただ、指導官とレクチャーを受けている他の冒険者プレイヤーにとってはいい迷惑なのだが。



「武器によっては抜刀が必要な場合があります」

 指導官が刺突剣を鞘から抜き放つと、自然に構える態勢になっている状態を皆に見せている。

「えっと、クラスセット・アーマメントが出来ている...あ、」


「マルだよー!」

 マルの子供らしい部分がおもいっきり前に出てきているが。

「えっと、マルちゃん...抜刀してみてください」

 指導官に誘導されて、腰の短剣を鞘から抜いた。

 すると、膝くらいまでで折り返すロープ付きの短剣と、それを二刀で構える『くのいち』の姿がある。

 腰の短剣も同じタイプのように見えることから、指導官は、恐らく場合によって四刀を自在に扱える可能性があると観察している。

「武器スキル習得し、使いこなす事で武器特有の間合いと、強化や解放といった発展的な使い方を憶えていきます。私の場合は、この刺突です――」

 と、指導官は目の前の案山子に向かって神速の突きを炸裂させる。

 最初の立ち位置から踏み込みまで20mも離れていて斬撃が終了した時は、案山子の後方10mまで進んでいる。

 例の案山子は、上部と下部に分かれて吹き飛び、上部位のみが粉々になっていた。

 これは冒険者から拍手と歓声が上がっている。

「武器スキルを極めると、ただの刺突が必殺技にもなりえます――」

 と、言ってる傍から、案山子を相手にマルが何やら遊びだしている。


 案山子は、彼女の背後にある。

 それをちらっと確認すると、ロープ・ダガーを二本、自分の目の前に投げる。

 ロープを引き戻して、角度を変えると天井に当てて、更に向きを変えさせた。そうして変幻自在に向きを変えさせて、案山子の背中に二本のダガーが刺さるという離れ業を楽しんでいる。問題児を通り越して、嫌がらせでしかない。

 が、指導員の大人な対応が続く。

 もっとも指導員もマルの無邪気な行動が楽しくて仕方なかった。

 今回の仕事は、評価が貰えなくてもいいとさえ思っている。


 これは、面白い人材に出会えたかもしれないと考えていた。


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