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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 若葉マークの冒険者
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-02話 始まりの街- 

 朝起きて、目が覚めるような冷水で顔を洗う。湯を注ぐだけの簡単なスープと、トースターで焦げたパンを食べる普通いつもの毎日に退屈しながら、俺は、通いなれたいつもの駅を自転車で向かう。腋臭の目に染みる殺人的悪臭を放つ大学生と、しきりに俺の脚を踏むヒールのババア。乗車率180%の人間プレスを体験しながら出社。

 始業9時、終業19時、残業2時間のブラック企業で働き、再び家路を急ぐ。

 こんな惨めな人生を送っている。


 俺は、いや俺の唯一の楽しみが、ゲームの最新情報をチェックすることだ。

 余暇が無いけど、なんとかやり繰りしてゲームにインする。

 MrMMO RPG(Mixed reality Massively Multiplayer Online Role-Playing Game)『ハイファンタジー・オンライン(High Fantasy Online)』。

 俺が参加しているゲーム名だ。


 VRだけでなく、ARでもアクセスできる革命的なシステムで、端末を選ばないクロスプラットフォームが採用されたロールプレイングゲームだ。

 基本のゲームシステムは、アバターの強さをレベルから、スキルにしたこと。

 日本のゲームとしては珍しいスタイルだ。

 組み合わせられるスキルの数は豊富で、最強テンプレは、あるにはあるけどもソレが全てというものでもない。と、言うのもあくまでも『これは抑えておけ』という感覚的なものでテッパンは流動してる。

 また、強さの基準はスキルだけでなくアイテムレベルでも強化できる点が挙げられる。

 アバターにはステータスが用意され、スキルとアイテムで強化されながら、戦闘や生産の場で活躍できるのだ。

 また、大筋と言える物語は存在したが、基本的にはプレイヤーの自由意思を尊重して、これを強要しなかった。その他では、海外のゲームで取り入れられたMODという手法によって、プレイヤーがクリエイターとしてゲームのイベントや作品の発表に貢献できるシステムをあらかじめ導入していたことにより、後にMODクリエイターズという有志がプレイヤー側から立ち上がり、短編・長編問わずストーリーを追加。これによってゲームは真の意味でのオープンワールドになっていった。

 だから、俺みたいな余暇が足りない連中ものんびりとゲームをプレイしていられる。


 そして、最近の噂だが近々、大型アップデートがあるという話があがっている。


 その情報の真贋を確かめるべく、俺はここにINしている。

 ハイファンタジー・オンラインの始まりの街に。

 公式には運営がプレイヤーに自治を任せて進行させてきた。

 ここ2年を経て、初期組と新規組の差は大きく開いている。

 俺も、新規組と比較して大して変わってない程度だが、こういうちょっと波に乗り遅れた連中を救済してくれる上級者がいる。これを初心者支援プログラムと呼んでいる。


 ここ『始まりの街』で自治会が運営しているプログラムに参加すると、受付を済ませるだけで初期クエストまで上級者が付き合ってくれるというエスコート・システムが存在する。最早、機械的というより人情にちかい。隣人を愛せよ?だっけか...いいゲームだから長く遊んでいってね――なんて雰囲気の話だったかな。

 と、まあ、この街をポータルとして登録していれば、何かと支援は受けられるって事だ。

「やあ、おひさしぶり」

 声を掛けてきたのは、同じ露天組の木工師の人だ。

 いちいち名前を呼び合うほどの友ではないけど、露天商をしていると顔なじみが少し増える。

「先日のローズウッドは質が良かったですね?」

 なんて、世間話を混ぜてみる。

 結局、どこへ行ってもコミュニケーションは必要なんだよな。

 ゲームって言ってもオンラインでリアルの顔が見えないだけ。

 ボイスチェンジャーを使えば、声色が変わっておっさんが少女やってたり、おばさんがイケメンを演じてたりする。リアル同性のアバターから魔法少女みたいなアイドルまでいる世界。

 どこへ言っても人間関係が大事って話だわ。

 とか、考えてた。

「――って森に行って、原生林を見つけたんですよ~」

 って、木工師は大はしゃぎだった。

 目を輝かせてるんだろうけど、アバターにそんな機能はない。

 材質を視る目という鑑識スキルがある。これが到達上限(レベル5=熟練度100)いっぱいまで上がると、最上級の原木を発見しやすくなるという。まあ、聞いた話では、竹取物語のように対象物が光って見えるというんだけど、そんな到達者に出会ったことはない。

 目の前の木工師もせいぜいレベル3だという。

 そもそも、このゲームのスキル成長速度はマゾ仕様だ。

 確かにレベル1からレベル2へ上がると、景色が違って見えるほどスキルのカバー率が広がる。

 例えば、武器で『弓』を選択しよう。いや、武器スキルもあるので、単に生活するだけでも何かしらのスキルが必要になっている。

 では、『弓』だが、レベル1では武器の初歩的な知識と、扱い方について知っている程度だ。

 命中とか威力なんてのは武器に左右される。しかし、1段階でも上がると激変する――武器に精通した知識量は増え、必要筋力などの条件が緩和されて、命中や狙撃、クリティカル発生率などもスキルに応じて強化されるのだ。

 これなら、上げない訳にはいかなくなる。

 しかし、このスキル上げはマゾ仕様だ。

 攻略組でさえ、上限に到達したプレイヤーは少なく、効率的な稼ぎが出来ないと言われている。

 要するに、極めるに対して近道は無いという教訓めいたものがある。


「あれですか、噂の...」

 いつの間にか、木工師は久々の俺が何を目的にINしたのかを推察していた。


「ええ、やっぱり気になるじゃないですか」

 って苦笑して見せた。

 いや、そういう返し方しか出来ない。

 俺と違って毎日、露天商をしている木工師にとってのINは日課のようなものだ。

 俺は、少ない息抜きの時間をコレに当てている。

 不定期な上に、暫く入って無かった訳だから、当然『例の噂』に引き寄せられたと思うだろう。

 間違いなくそれで無ければ、明日も仕事なのに深夜2時過ぎにINはしないものさ。

「週末も忙しいので? あ、リアル...聞いちゃった、ご、ごめんなさい」

 って木工師が慌てて頭を下げている。

 リアルの話はこういう世界では、ご法度だ。

 身バレっていうプライベート汚染もあるんだけど、大抵の人が余暇を楽しみに接続するのだからリアルの時間に戻すのは、夢の世界に浸る人に冷や水を掛けるような行いだというマナー違反。

 でも、不思議といやな気持ちにはならなかった。

 おじさん風アバターなのに『ひゃー、ごめんねー』って頭を下げて、小刻みにお詫びしてて赤面したのか、慌てた様子が可愛らしい雰囲気があった。

「まあ、気にしないでください」

 

「え? あ、ありがとう~」

 半泣きめいた表情を返している。

 木工師の人、知り合いだったかな~とも思っていた。

「噂がこんな時間に転がってるというのも変ですけど、何かありそうだなーって」

 というのは、俺の勘だ。

 シークレット実装という手法はよくやる手だが、IN率がひゅっと下がる深夜に何かが起こるものだと相場が決まっている。そういうのを逃したくないのがゲーマーのさがというもの。


 ほら、南の森のほうに閃光が!

 え? 今、何が起きたんだ?!


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[気になる点] 結局、この話の主人公ってこの人なの?それともこの人と主人公は別の存在なの?
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