- C 1350話 ヘブリティーズ会戦 5 -
先遣の二軍が合流した央軍は、老練な将の下。
キリングヤシガニに強襲された本陣を救出、その足で、アイルズ高原まで退くこととなった。
アップルクロス領とはまだ少し距離のある地域だけど。
比較的安全な立地である。
ヘブリティーズ平原の湿地帯よりかは標高が高く、緩やかな高さの丘となだらかに伸びる稜線が特徴。
丘の頂上を取れば、見渡す限りは平地のよう。
これほどの立地はなく、再編という事業に相応しい地だった。
問題は――。
境都・キャニスタロックとの補給線の確保だ。
中継点を担ってた補給基地・カルグリーン領都跡地『スカイ』の陥落に対する信ぴょう性だ。
辺境伯領とは目と鼻の先、かつ、中継点という重要度から補給基地を守っていた傭兵は、農民クランも戦力に加えて全軍の片翼も担えるほどの兵数だった。
まあ要するに質より量の戦争であれば、だ。
今までの散発的なゲリラや奇襲では手も足も出ないほどの分厚い守りがあったわけで。
これが抜かれたとあっては。
憂国軍に如何ほどの士気が残っているかという状況。
あちゃー。
ってな感情がどばどば吹きがしてる、今ココ。
◇
旧カルグリーン領・補給基地『スカイ』の攻略は、首なしの騎士と魔獣たち調教師による、サーカス団という派手な部隊が一つ動いていた。子ガニの時分より飼い慣らしたグリーンクラブと、イエロークラブの混成。
レッドアイ・ビッグクラブなんて凶悪そうな名のカニまで実戦投入されて。
いやあ、磯臭いったらありゃしない。
ムツキの鎧にも換気装置と特殊なフィルターがあるんだけど。
こう濃厚な生臭さは濾しても、濾してもすり抜けて。
花粉症よろしく彼女はずっと鼻をすすって過ごしてた。
とりあえず。
戦う前から闘争の趨勢は決しつつあって。
あとはもう一押しというところで。
王国軍に一報。
短くてしかし重要な交信――『女王陛下のお姿が後宮より消えた』というもの。
王国軍上層部に激震。
救国の英雄はここにありと高々に宣言して、自分たちの地位を高める事ばかり考えてた。
元皇太子の派閥は、戦力をかき集めた。
次に狙われるなら長子継承の順序からすれば、元皇太子ということになる。
故に疑われても身を固める必要があった。
その次は、と。
「禁軍5千は何をしていた!!」
まさにソレ。




