- C 1348話 ヘブリティーズ会戦 3 -
ここヘブリティーズ平原は打算の結果、両軍が布陣している状況。
ここが『蟹の巣』だなんて知る由もない。
そもそもでいうと、魔女マーガレットも。
聡く考えるほど地形の、とか。
棲息の、とか。
群生の、とか。
それらを詳しく仔細に調査してはいない。
彼女がこの島に来た時期から察するに、歩き回った地域は王国の3分の1も無いだろう。
後は、その当時の人々、行商人たちから聞き取った証言のみだ。
本人が行かなくても眷属が赴けばいい。
理屈では。
感じ方は、人それぞれだし。
まあ、その話はいいか。
ゲリラ戦を強いてちょっかいを加え。
散発的な攻撃で、エルフ達に甘い汁を吸わせた。
ムツキことデュラハン卿の言葉を借りて『――この辺で大きな戦果を挙げてみてはどうでしょう?!』と誘うための蜜だったから。軍上層部は、上機嫌にこの上奏に耳を傾けたのである。
疑われてはダメだ。
少しでも冷や水のようなセリフが出ないようにする。
そのための工作も眷属が行った。
全軍で、人類を叩きのめしてもらわなくてはならない。
◆
魔女と、辺境伯爵令嬢の姿は王城にあった。
女王陛下に上京の御挨拶をするためでなく、王城のあちこちで目撃されて――
双子姉弟殿下の支配地域で姿が消えた。
転移魔法によって、マーガレットは王都の自領へ戻っている。
「結局、何がしたかったのよ。もう、久しぶりのヒールで足が痛いんだけど?!」
給仕の仕事では平たい靴で動き回り。
ヒールの体重移動をすっかり忘れてた。
動きやす靴は理由があるのだと知る。
「理由は簡単ですよ、城の連中に印象憑かせるためです」
やや不機嫌そうだけど。
令嬢は食いついてきた。
「なんの?」
「陛下の気に掛ける相手が、双子の姉弟だと」
えー知らないわよ?的なセリフになる。
その通りだ。
アップルクロス伯領から出ても、メイドのままだし。
領内の行事以外は引き籠もり前提に行動してる。
目下、ロマンス小説にご執心だ。
先代の遺児とは面識すらない。
「公には、田舎領主たちの集いの場で、あなたに膝を突かせた相手として、見せています。地方の領主たちからは反感を、中央貴族たちからには一目置かれ、女王には不信感と。まあこんだけ監視されたら動きにくいでしょうなあ~」
怖い怖い。
クレイル辺境公主でさえ、かき集めれば私兵だけで王国軍の一翼を担う。
その版図の倍はあると目されたアップルクロス領。
下手に突くのは藪蛇と思われてた。
いあ、間違いなく王家でも査察官を贈り難い相手だが。
「そういえば、査察官。来てたわね?」
「知ってましたか!」
マーガレットが驚いたように返した。
彼女も『それぐらいは知ってるわよ、メイドの耳と目は誤魔化せないのよ』と。
「今、彼らはリバー・アップルの河口に沈んでます。そろそろ... イエロー・クラブの腹に納まってる頃合いでしょうね」
蟹のエサにしたという。
ああ。
確かに最近みないなあって。
「嘘!? ヤったの!!!」
頷かれた。
顔を覆い、椅子から滑り落ちて。
カタカタ震えて笑った。
「鬼畜が!!」




