- C 1347話 ヘブリティーズ会戦 2 -
ダークエルフ側もこんな平地は初めてだ。
たぶん二世代前の老人たちなら知っている地域かもだが、これらの記述がすっぽり抜け落ちていた。
王国史から抜け落ちても、記憶は口伝で残ることが多い。
いや、その口伝も今は微妙か。
王国軍の方が、予算の取り合いで長らくまともな国土防衛に専念してこなかった。
300年という因縁の戦いだってこの体たらくだ。
国内整備が行き届いていれば、口伝なんて曖昧ではなく記録として残ったかもしれない。
さて、
Aさんが沁み出た水に興味をしめす。
いや、流石に舐めることはしないけど。
容器に採って分析班へ。
「どったの?」
マルが飛びつく。
こういうアンテナは必要なんだろうなあ。
状況の変化に聡く成れ。
「いや、なんかイヤな気がする。平原の中央に布陣している連中のどよめきが気になった」
ああ、確かに。
開拓サイドの『憂国軍』、変な声が聞こえる。
威勢とか言うレベルじゃないな。
奇声?
悲鳴?
なんであれヤバいのは確かだろう。
◆
わたしらの心配は的中した。
必中でクリティカルもんのダメージだ。
これ、魔女マーガレットが狙ってたんだとすると鬼畜だと思う。
この平原は、旧王国領図でも外側に位置し。
狩猟場だった記録があった。
まあ、ぶっちゃけると先遣隊が共有している『蟹の巣』だ。
エルフたちが陣を敷いた地域が、グリーンクラブ。
草食だけど凶暴な性格で、芝生みたいに見える苔の根を食していた。
踏むとあふれる水は海水なので、内陸部なのにどこか海と繋がっている穴があるとみられる。
ところどころに見える丘はグリーンクラブの背だった。
さて現在進行形で奇声、どよめきが上がっている。
中央の陣地――憂国軍侵攻の本隊の陣地だが、絶賛、キリングヤシガニの襲撃を受けていた。
こいつらが厄介なのは生きている肉しか食わないことだ。
強化外骨格の腕力に匹敵する巨大なハサミと、ドラゴンのひと噛みにも耐える外皮の硬さ。陸上最速の俊敏性を有する足の速さが自慢の巨大生物。ざっと見で全高20メートル強、体長はその3倍以上とみる。
いや、これもう、怪獣やん。
蒼のやつマルに作ってもらった、ハエみたいな飛行ゴーレムに巻き付かれて。
空から暴君の蹂躙を観察してた。
「ちょっとー、報告しなさいよー!!!」
わたしの声は奇声にかき消されたようです。




