- C 1344話 死地から脱出せよ 4 -
先遣三軍の中に執政官が送り込んだスパイがある。
この報せが右軍より発せられた――作戦遂行中の陸上戦艦が辿ったポイントは巧みに臥せられ改ざんされてた。開拓事業の中で、特殊作戦群・前哨歩兵部隊による『測量』によって、開拓エリアは常に新しい地図を作成している。
マグ・ウイナー少将が提案してたものも、斥候部隊が発見した遺跡の調査などで。
執政官が伝えてきたものも含まれる。
いわゆる情報の裏取りだ。
現地の調査は緑の海に呑み込まれている、かつての王国領の境を知るためのものだが。
同時に、人類の到達を明らかにするものでもある。
詳しい地図が無い事には国境も、戦争も継続できないから。
「そんな事は百も承知だった筈じゃないか!!」
左軍指揮、超絶美形のアスパラガスが吠えてた。
いあ、アスパダガス中将。
190cm越えの細マッチョなスタイル。
天が二物を与えたという例なのだが。
女には詰めが甘い。
『顔が良いんだ、そりゃヤりまくるだろ!!』
と、敵を作る典型で、性格も終わってた。
◇
幕僚に迫られ、ブリッジの壁に追い詰められてるトコで。
助け船がでた――右軍のマグ少将のソレ。
『何処の連中も足の引っ張り合いに密偵を忍ばせてます。憂国軍も自分たちの利益になるよう働きかける為の者が評議会に潜り込んでいますが』
「え?! マジの話だった??」
中将の瞬きが早くなる。
どんなことが百も承知だったのか。
『えー、まあ、はい。いえ、其れでしたら今回の執政官の行った手ですが!!』
警報が鳴る。
右軍かとも思ったけど。
これは左軍から。
「閣下、」
耳打ちされたアスパダガスが苦虫を嚙み潰したように。
「すまん急用だ。この... スパイの件だが俺はここで抜けるかも知れん」
マグ少将が何度も聞き返したんだけど。
唐突に通信がキレた。
切断されたっぽい。
遠見の鏡通信は、魔力リソースが用いられて起動する。
戦闘直後や、陸上戦艦の備蓄に影響するので長時間や、長距離にはコストが高くつくもので。
急用もあって中将は回線を遮断させた。
『総員に継ぐ! 我が左軍の最左翼が敵に捕捉され、今しがた戦闘に入った。今日までは消極な方針だったが、今回は違う。もーやめだ、節約? なんだそ、旨いの旨え筈がない!! ここで勝てなきゃ結局未帰還になっちまうって事だ。野郎ども、後先考えずひとりでも多く逃げるために、勝つぞ』
暴言とか、諦めとか。
狂ってるかもだけど、ムード的には発破が効いた。
央軍や左軍よりも王国領に近い縁を往くから、兵力も物資も多めに分配して――
ズタボロの雑巾みたいにすり減っている。
プレイヤーの傭兵なんか、最初の1週間で全滅した。
全滅理由。
宙を往くナイフ使いが出てきたことだ。
《ナイフ使いが出てこない代わりに、烏マスクの群れか...つくづく左軍にツキがねえ》




