- C 1343話 死地から脱出せよ 3 -
右軍の撤収はもたつきがあった。
央軍が相手にしてた野生で狂暴なヤシガニ、レッドクラブなんて巨大な甲殻類たちが死臭に群がり収拾がつかなくなったのだ。
撃退したエルフの肉を喰らうカニの化け物たち。
これを倒すと、巨大なアリのような昆虫が土の中からやってくる。
いや、コレの繰り返しだった。
魔獣や魔物の発生サイクルはこれらの戦闘でなんとなく理解は出来た。
《なるほど、生きているとは此の事か》
憂国軍・街史編纂室長を務めてた、本の虫たる称号が与えられた将校。
ちょっと経緯は珍しいのだけど、マグ・ウイナー少将は40歳手前で少将へと上がった稀有な人材。
そういう見方もある。
島の生態を調査している変わり者だって――
畑違いから代将にまで飛び級したのもあるから、ある意味、それほど珍しくも無い。
憂国軍の在り方からすると、だ。
もともと傭兵、ゴロツキの集まりなのだから。
憂国軍の中にも旧時代の考えがある。
前時代的というか。
軍人とは斯くあるべし――みたいな。
バターナイフ代将は弁をもって奇策を捻じ込んできた矮小な軍人だった。
ぶっちゃけるとそんな感じ。
「と、まあ個人の感想だけど」
陸上戦艦のブリーフィングルーム。
少将を前に、各々佐官からが詰めて、パイプ椅子で膝を組んでるフリースタイル。
見かねた上級将校らが動くも。
「いや、そのままフリーにしていていい。いずれにせよ、この作戦は立案からして極めて情報不足から始まっている。恐らくも、この地図は地図としても価値がなく、こう正面に膝を突き合わせてエルフ達と対峙している状況から推測すると」
皆の喉が上下して。
珈琲の湯気が静かに動いてた。
「央軍の為に殿を引き受けるだけの余力が乏しい。一刻も早く央軍と現地集合ではない形で合流した方がいいと思うのだが? 何か異論はあるだろうか」
最善かは今のところ答えが出ない。
すでに大軍が3分の1となっている不味い状況。
物資も均等ではないが3分割されて3度目の補給が無かった。
「1度目、2度目と長大な侵攻距離に物資が最前線まで安全に届けられて、3度目も無事に届くのだろうと錯覚したのが痛かったですね」
右軍兵站部長がぼやく。
少将も頷きかけて、両目を左手の腹で覆った。
「順調すぎると思ってたんだ。伸びた補給線がいくらか問題になるとは思ってたが、後列の部隊。ここが管理している一時ストックの備蓄庫から再編成されて各所に届けられる。我々が直に均し、安全を確保した地域を通るから」
ちょ。
地ならしって作業も後列の本隊と食い違いがあったとしたら。
もう一度作戦図がモニターを埋め尽くした。
右軍の三角測量では地図上の2ブロック右に明滅していて。
手渡された王国領図の外側にあった。
「執政官め!!」




