- C 1338話 大遠征と消耗戦 3 -
「本当ですかねえ? 今の語りは」
令嬢は余り昔語りをしない。
まじめに父代の治世以外は知らない可能性が高い。
また、最近になって領府の歴史書に目を通すようになった。
「さてね、わたしが最初に謁見の間でお目通りさせてもらった時は、アホな方の子だったよ」
アホは貴族にとって誉め言葉に近い。
何せ、貴族らしい貴族。
特権階級のらしさがにじみ出ているという意味だからだ。
罵倒のために絞り出された『アホ』とは違うのだ。
寝転がってた執政官も。
壁に掛けてあった時計を見て舌打ちを踏まえて立ち上がる。
「行きたくないなあ」
政務の時間。
暇を持て余してるようで、暇ではない。
マーガレットも辺境伯爵としてのお時間ってのがある。
「姫さんの肩の荷、オレたち眷属が支えますんで」
「そこは代わりに持ってくれると」
押し付けあってるわけじゃない。
この後の予定は市場操作がある。
最前線は孤立し、中列と後列も程よく伸びきって連絡方法が限られるよう調整してある。
この上で更に苦しめたところで彼らには爆発、いや暴発してもらう必要があった。
現地人、つまりすでに点在しているお人よしの獣人族が原住民たちの。
備蓄食料を襲撃して奪い取るという暴挙。
「これはね、かつてフランス百年戦争時においてより戦術的に使用され、奥に引っ込んでたフランス国王を戦争のど真ん中引きずり出させるために用いたとされる“騎行”、あるいは“騎行戦術”ってもんだね。本来は拠点の人々が保護区の為政者に対し『なぜ守ってくれなかった』とか『難民として要塞が抱えるよう』仕向けるような狙いがあるんだけど...」
碧の海に飲まれた人々の中で、それでもギリギリのところで踏ん張ってた臣民を。
王国軍や執政官マーガレットの戌組は知っている。
巨額の捜索事業で得た情報だけども。
時々報告はしても国家事業は継続してもらいたいという...
金に煩い王国軍事情により、お口チャックであった。
マーガレットが口止めしたのはいつか使えると思ったからだが。
「さあ、消耗戦のための準備に入ろう」
◇
PKKやPKさえも祭りに参加した今、近場の比較的安全なエリアで農民プレイしているプレイヤーか、あるいはデイリークエストだけを繰り返しているライト勢しか残っていない本拠点にて、治安悪化イベントが発生した。
支庁が課したという税率が一時的に4割増となってたからだ。
戦時特別徴収とかアナウンスに流れた気がした。
プレイヤーも公団特権で安く買えていた回復薬がいつもの20%増へ。
瞬く間に暴動が起き、備蓄・食糧庫が燃やされた。
あー。




