- C 1336話 大遠征と消耗戦 1 -
最前線の塗りつぶし作業は順調かに見えた。
辺境伯領の境都・キャニスタロックから北部は何年か前までは確かに王国領だった。
王国軍がその存在証明でもある国家事業のひとつ『国内整備』に対して真摯に向き合わなかった結果が、かつて王国領だったという状況にしたのだ。
緑の海に臣民ごと呑まれてしまった。
こうして消えた国民は行方不明として、別の内政事業となって毎年莫大な予算が投じられている。
今の時点で1万人以上が喪失していた。
もう過去形でいいだろう。
王国軍の整備は、版図が広がる以前から存在する。
近代的に再編成と階級制になったのはいつだったか判然としない。
ただ、平民出身でも下士官や将校の壁を越えることが出来るとしたのは、先々代女王の治世からだ。
わりと新しいんで。
今のところは爵位で階級を買っている状態にある。
跡えば。
「姉上ぇー見てますかー!! 私が、首級3つ取りましたよー!!!」
なんて声を張り上げて、観覧席側にあった婦人に手を振る青年があって。
最前線と中段を結ぶ細い獣道から奇襲して、侵略者の補給線を寸断したという。
その功労に報いて、今、頭頂部ハゲのヒグマみたいな将軍から勲章が授与されようとしていた。
彼は子爵令息の身分で大尉に昇進もしたのである。
「まあ、立派です事」
元の階級は少尉だ。
王国軍として久しぶりの華々しい戦果ではあるけども、たかだか1回の襲撃で昇進するほどの功績でもない。
王国軍が大活躍した裏で、散々な目に当たった兵団もある。
首なしの騎士・デュラハン卿からの小耳に挟んだという、逃亡先で見知った情報によって陸軍はかつてないほどの規模で兵が展開している。鎧の下でカンペを見ながら一言一句間違いなく吹聴することが出来るけども、それをしたらまあ。
逆さづりか。
いあ、二重スパイの嫌疑も掛かって罪状が増えそうだ。
こう、あれ~なんだったかなあー。
なんてうろ覚えを装うのが丁度いい。
そうしろって言われてた。
たまに情報のファクトチェック法について問われるんだけど。
そこはもにょごにょと口を濁す。
例の兵舎から無理やり連れだされた怖い人が、ムツキの情報源の裏取りをとってきて正確性にケチがつかないよう心砕いて暗躍してた。
もう少し冷静に見直せばマッチポンプだと気が付くと思うのだけどね。




