- C 1330話 仮面の王とクレイル辺境公主 5 -
仮面の王。
大貴族の御落胤とか、放蕩が過ぎて勘当された身分だとか。
噂の絶えないチヨダ卿だが。
辺境公主の下屋敷の裏手までふてぶてしく歩いてくると――目端にかかる路地の方を見て。
「なあ、そろそろ姿が見てえんだがよ、晒す気はあるんかな?」
と吐いた。
王都の路は頑丈な薄い石の板を履かせてあるタイプだ。
これをヒタヒタではなく。
音なく擦るように近寄って来る衛兵の姿があった。
「やっぱり『帝国の魔女』の皆さんかよ?!」
擬音的にはヌルヌルってな感じだろうか。
衛兵風に姿形をかたどってみたものの。
異様な雰囲気は知らぬ者との差が大きい。
「それ、擬態ってやつかい?」
「こんな状況でよく舌が回る」
泥人形風のをかき分けて、人影が伸びてきた。
「こういう干渉はしないと思ってたけど? それはあんたらを買被ってたんかな」
「安い挑発には乗らんよ。うちの姫さんが遊んでたトコにふらっと現れては、邪魔ばかりしてきた第七王子でものさばらしていた懐の大きさに胡坐をかかんでもらいたい、と。忠告しに来ただけだ」
王子は継承権ありなしでも末王子まで10数人ある。
長姉以前からの男子というと、足の指も必要かもしれない。
王国の継承者が嫡出子の長子限定ではない以上、契約できる精霊の枚数で決まる実力主義で。
男女差も関係ないとなると。
これはもう喧嘩である。
直近だと、
元皇太子が子の中ではトップ。
次点では双子の姉と、末王子が続くので。
結果的に継承権も若くなっている。
実力主義なので、内輪で殺し合いが起きなければ。
この順位が覆ることはないだろうというほどのデキレースなのだ。
「なーんだ、君たちの主人は俺の事も知ってたのか」
チヨダ卿こと。
辺境公主の実兄にして第七王子、封された爵と家は“ヘムズウェル”。
小さな荘園と長閑な村がある。
館は身分のわりに小さく、村を見渡せる丘の上にあった。
軍部が整備に力を入れていれば。
かの小領地は今でも存在していたかもしれない地だ。
あれの特産は――
「貴重な薬草でしたね? たしか中級ポーション制作に必要な」
魔女の手下だからこそ。
薬草知識は一般人よりもある。
あの地域のみに自生してた貴重な薬草で、村が呑まれた後で軍は酷い追及を受けた。
その腹いせか、
『領主から整備の要請が無かった』と釈明した。
住民は森に消えたし。
領主も行方不明となって、これらの罪過は不問となった。
「薬草よりも住民が少ないからと切り捨てられたのが無念で仕方ない」
なんて吐露した。
「だが、貴殿らの主人も似た冷酷さを受けるが?!!」
邪魔してた理由。
軍部は請け負った国家事業費を横領してた。
アップルクロス辺境伯の方は、今一つ薄気味が悪い。
「そんな感情で語られてもねえ」




