- C 1328話 仮面の王とクレイル辺境公主 3 -
クレイル辺境公は王都にふたつの屋敷がある。
まあ、仮に王宮近いとこは『上屋敷』。
辺境公と言えば、封地の領地経営は王国に代わって委任統治、つまり。
領主の裁量に任せるというものだ。
王国の指図を受けなくて済むという点ではメリットが大きいように思うけども。
これがメリットばかりではない。
例えば、王城からほど近い一等地に屋敷を構えさせられる。
年間の維持費に補助金は出ないから。
当然、上屋敷に使用人以外の住人が居ないとなると、税金を多く納税しないといけなくなるし。
自領の整備・保全・補修なども自前で行う必要がある。
また、王都の外縁部にも要地として大貴族たちは屋敷を構えさせられてた。
これを便宜上『下屋敷』と呼称する。
こちらの用途はわりとアバウトだ。
プライベートとか、或いはゲストハウスに利用する貴族も少なくない。
アパートメントに利用した者もいるね。
一等地で、部屋数も多く、使用人も身元保証されたプロが住み込みで働いている。
「めっちゃ賢い使い方じゃないか!!」
ウナさんから早速とかそういう言葉が出る。
ただ、公主は首を横に振った。
「伯爵位までならソレも黙認される。王族の一員が同じことをしたら面子がつぶれるんだよね」
見栄か、難儀な。
それ以外にも要地としての王都守備側の手前ってのもある。
「誰に攻められるのかってのもあるんだけど。下屋敷はいざという時の城郭や、王都の防御機能に組み込まれるって話だから。ほどよく空き家でないと困るって話なんだな~コレが」
上屋敷と違って下屋敷には最低補助金がねん出される。
本当に最低金額らしいけど。
修繕には十分らしい。
「はい! そこで問題です!!」
なになに。
ちょっと唐突過ぎない。
「下屋敷に今、厄介な住人がいます」
はあ。
それで...
「どうか追い出してくださらないでしょうか?」
なんで。
◇
住み着いたのは、公主とは幼い頃に身に覚えのない約束を交わしたのだという変質者だという。
甘ったるい香水薫る封書が、何度も、何度も、何度...も王都から自領に送付され続けてきて、ここらへんで今ぴたりと止んでいるというのだ。
ずっと凶悪な押しが続いてたのに、だ。
ぴたりと止むと、これはこれで気になって仕方ないというのだが。
「それは、そういう作戦なのでは?」
好きよ嫌いよは表裏だもんなあ。
本当に何もなければそもそも関心が無いというのだし。
まあ、あれでしょ。
「くぅ、認めます。気になって仕方ないのです」
そっか。




