- C 1326話 仮面の王とクレイル辺境公主 1 -
オラニエ伯の死亡は即座に、婿入りした伯爵家に届けられた。
ぶっちゃけると。
元伯爵と夫人の方は、スポンスハイム大公の息が掛かった婿殿と仲がいい訳では無かった。
子爵家の末の男で粗野な態度と、婿入りだというのに横柄で金使いの荒い者だったから。
領地経営での実権は元伯爵が担い。
夫人も王宮に代理として出仕してたのだ。
働きもしないのに夜会へ出るパターン。
極悪伯爵とか言ってみたい。
「あ、死んだんだ」
わりと関心のない軽い言葉が告げられた。
悪霊に取り殺されました――夫人たちには“しゃぶられ尽くされました”って。
代弁すると、いい気味だ。
スポンスハイム家としては。
言わずもがな。
これからの楽しい国家掌握に支障がでる。
これらのがすべての手札ではないのだけど、上級貴族の身持ちは硬く。
借金のカタだとか、乱暴な手段というのは要らぬ軋轢を生む。
勿論、オラニエ伯の蛮行は大公の耳に入ってた。
戴冠させて傀儡に落とせば、だ。
後は楽隠居くらいの扱いに堕として。
血統だよりに子が継げば、大公勢力が大いに幅を利かせられるようになる。
それ露と消えました。
◇
こうしてスポンスハイムから、派遣された青年が封印の黒曜石を足で踏み砕く。
「宜しかったのですか? そんな玩具で長老の機嫌を損ねるような謀略をして」
ゲルツ宮廷伯ジークフリート。
涼しそうな白いツラで眩しそうに従者の娘の胸元を覗きこんでる。
ああ、もうちょい捩じって。
とか。
最低の変態さんです。
「薄着はしてません、これは胸当てが擦れ」
ちょ。
「わーてるって、でもその膨らみは...マジもんd」
顔面に剣の柄がめり込む。
グーじゃないので殴り飛ばして。
足鎧の先で蹴り飛ばされた。
ツンとして痛い方。
「やーやめてー」
「アホは死ねです。逝ってヨシって、ヘルメット被ったネコにも言われました!!」
え? どこどこ? どこの獣人族??
「ああーやめてー」
会場内では検分も始まった。
悪霊の方は、1匹だけ残して浄化され。
その捕縛したレイスは獲れたて新鮮なダンジョン製の魔物だと判明する。
また、
チヨダ卿の行方も、会場の騒ぎに呼応してか、斥候たちが見逃してしまったようだ。
偶然の重ね掛けだけど。
何となくだけど、ようやくわたしたちの前で動き始めた感じ?




