- C 1206話 マルのお散歩 1 -
アーサー卿とカエデ一行の王国調査は、暫く大規模戦ウィークで足止めとなる。
合流したてのソロプレイヤーを大所帯なパーティーの水に馴致させなければならない。
その後は対策と攻略になるだろうか。
出る杭は打たれたので、再びナイフの死神と遭遇する機会は薄い。
いや、首なしの騎士は撃退され。
『オナガザル』を駆ってたプレイヤーとの接点がある“ふたり”は対象かもしれない。
いや、それよりも情報収集が先になるだろう。
◆
マルの方――王都の城壁の外にある、外都区の街について念入りに調べる毎日だ。
学校では見せない貌。
メモ魔だったり、厄介な旅行者ぽかったり。
NPCの街。
プレイヤーが闊歩していない分、新鮮かつ...
ちょっとひとりでは歩けない雰囲気。
戦鬼さんに身バレしたマルは肩の荷が下りたのか。
住人と同じ格好、
フレーム似の装甲を展開せずに散歩する。
驚いたことに。
ダークエルフたちの当たりがいい。
戦鬼さんたちに姿を晒したときは、人として認識されたのだが。
こちらの鏡で己の姿を再確認すると“エルフ”だった、しかも新種の、丸耳ひらたい顔族。
よくある倭民族の面に褐色のレイヤーを重ねたような雰囲気。
恐らくはバリエーションがAI処理でも面倒になったのだろう。
「何をそんなに調べてるの?」
蒼が洗濯物を抱えて部屋に戻るトコ。
帰宅したばかりのマルに声を掛けた。
「孫子だよ、知ることで状況を識るになる。次のアクションを起こすのに大事な手を探してるのと...あとは日課。引き籠もりニートなのはハナ姉でボクじゃないし。遊び場が無いか足で探すのは嫌いじゃないんだよ、ただ。うん、ただ面倒なことは嫌いで――」
と綴り終える前に。
悲鳴、いや叫び声が挙がった。
ほらきた、イベントだ。
マルのお散歩が毎日充実して終わる筈がない。
「いや、ボクのは普通に辺りをブラついて、ケーキ屋さんとか探してただけで」
マルが踵を返して出口へ奔る。
外都の西区から火の手が。
黒っぽい点のようなものが多数、吹き飛ばされてて。
「あれは家屋?!」
二階に副官がある。
他の小隊も聞き込みや、調査、公共施設の利用にとで払っている状況で。
顔役が手配してくれた貸家に残りの隊があった。
かき集めてもせいぜい4小隊くらいだろう。
っうことは。
「小隊長!?」
副長がマルを眼下に捉えて、
「なにシたんですか!!!!」
やっぱり信用がない。
ここにあるのはリーパーズだけだ。
◇
ここが外都区と言われてる謂れから語る。
じっくりと聞き入る状況ではない。
いつでも王都の北側へ逃れる用意がある。
その理由が今、直面している『襲撃』にあるのだから。