- C 1194話 王都 4 -
「いや、するよ?行商。当たり前じゃんよ、どんな国でも青空市場に行くと、活気のほどで大まかな事が分るもんなんだよ。例えばこんな内陸のど真ん中っぽい王都の市場で生鮮食品が出てるとする」
ふむ。
マルはこういう時は饒舌なんだよな。
こう、普段はエサ子さんじゃないが、足の指の~その爪とか間なんかの黒ずみを拭おうと。
なんか違うとこで躍起になる。
変な子だなあって。
だがどうだろう。
「――近くに養殖に適している水辺か、水源を擁しているとか其処まで推測できる。いやさ、生活魔法としての氷漬けってのも非現実として、考慮するとしてもだ。飽食が過ぎる現代に比べれば、大量消費とは違った流通やリソースの消費などが見られるんじゃないかと」
で、行商はやるのだという。
酒類の好みは難しいので、現地に即して『麦酒』の方もバックヤードで作りながら売ることとする。
「蒼ちゃんは売り子として見栄えがいいんだけど」
わたしを一瞥するマルがある。
いああ、あんたも大概、ニッチな層にしか好まれんだろうに。
自分は棚の上から見物ですかい?
「ボクは散歩する予定だから、天ちゃんも一緒にどう?」
意外な誘いだった。
わたしは、たわわなあたしが豊かなだけで。
蒼のように何かに融け込み、何かに熱心になることはない。
手っ取り早く言えばドライ。
「悪く言うと不愛想」
マルが要らんことを言ってくれた。
◇
王国の都とは言ったものだが、王都のつくりは島の文明レベルをいい意味でも、悪い意味でも。
まるでちぐはぐな姿のように思える。
マルは散歩だと言ってたが。
雑踏の中で、町中を簡単にスケッチして回ってた。
例えば町中にも巡回する兵がある。
呼び止められるのは、どうもわたしだ。
子連れの...
親の方だと思われたようで。
「っ、こどものすることですので」
何となく念仏のように反復してたら、自然とそんな風に口に出してしまうようになってた。
「なかなかに上手いじゃないか! その反応の仕方」
「こどものする...と、とっとと...」
身内に使っても意味がない。
ややマルのあきれ顔がみれたけども。
彼女はわたしの真横に来て、スケッチした手帳の中を見せてくれた。
クソ、美術の単位は結構、自身があったのに。
マルの癖に...
絵が上手いじゃないか!?
「感心するとこはソコぢゃないからね」
そうだ。
挿絵は風景画で。
絵の中に溶け込むよう、文字がびっしりと埋められてた。
「ここは王都の中じゃあない。恐らくは第二市民街、つまり最下層な平民の街ってことになるね」
それでも活気は入植地のごく一般的な村以上であると言えた。
人口だってざっと見積もっても、10倍近くあるだろう。
いやそれだけではなさそうだけども。
其処となくこれ以上先へは高い身分の壁のようなものを感じてならなかった。