- C 1189話 騎士王、奔る 4 -
頑強だったガウェイン卿と比較すると、
痛いのや、楽しくない事には滅法弱かった騎士王は、あっさりとゲロった。
「拍子抜けだ」
エサ子が食堂で呟く。
聖櫃騎士団では最高戦力だと、泣く泣く吐露したガウェインの話に期待してた。
ガウェイン卿は仲間を売ったことに激しく後悔してた。
また、軍門に下ったのも不本意だとも。
同じ猪突系のエサ子さんも。
「アレには理性がある、立派なサムライだ!」と評価してた。
が――。
◇
「――だから、今回の聖櫃には負い目のような秘密も、後ろめたさもない。純粋にRTAを配信して、プレイを楽しみ、攻略の手助けまでしている。彼女が何をどう盛ったのかは今となっては分からないけども」
として、アーサー卿は未だ、後ろ手のまま拘束されてある。
拘束の理由は異性だからとかではない。
ま、本人曰く。
「俺に女とかガキとかの趣味はないぞ。其れだけは間違いなく完全に対象外だ!!」
ハナさんに殴られたが。
騎士王は、鼻血を垂らしながら、
「すいません、悪い意味じゃなく... 遊びとか、下心とか、そういう」
再び殴られた。
両頬が赤く腫れあがって、
「えっと、えっと... う、ううう...、、、お、俺、対象が男性なんで、その」
吐露するよう勧められ。
彼はキレイな顔を大きく腫らしてモルゴース女史との会話を吐いた。
確かに後ろめいたものは無かった。
RTMという規約のグレーゾーンに手は出しているようだけども。
「通報しちゃっていいのかな?」
言質は取れたし。
食堂からウナさんが来た。
不完全燃焼なエサ子さんも。
「よせよせ、それよりも」
捕縛してたダークエルフとの会話成立を知らせた。
戦災孤児を介した会話の模索。
いくつかの質問を通じて、ようやく自動翻訳にこぎつけた。
それでも片言による意味の通じにくさはのこっていて――。
「それでも上出来です」
「問題が一つある」
とは?
「陸上戦艦でしか翻訳できないことだ」
ギルドには資料の提出と尋問ログしか渡せないという。
「...っ、エルフが苦しみだす?!」
PvPvEが可能なフィールド上にある農園エリアでは、ヒャッハー!してた彼らも。
グリーンゾーンには近づかない。
システム上、プレイヤーを守るものだと思ってたが。
「戦艦内でも医務室と、尋問室に監房以外へは入ることも拒否してた。アレの目には恐怖の色が浮かんでたので、恐らくは生命の何かしらにトリガーめいた何かがあると見ていいんだろう」
詳しく調べたいけどって言葉がこぼれた。
施設的に研究目的じゃない。
治癒魔法がある世界で治療はメインになり切れない。
まあ、言って。
ヒールを受ける手前の応急処置くらいだろうか。
「もどかしいね」
「だな」