- C 1188話 騎士王、奔る 3 -
「頑丈だなあ、ガウェイン卿は。フレンド登録もして、今しがたカエデの戦力にしたけど。ボクらの方針に従えないってんなら、うん。フレンドファイヤだってこっちは気にしないで、ヤるよ?!」
モーって嘶きに代わって冷めた語気のエサ子さんがある。
声音のトーンは低い。
浮ついたトコは無くて、いささか不気味さがある。
担いでる戦斧を左右に持ち替えながら、遊んでるような。
実に、怖いんですけど?
本気に。
マジになったら、白兵最強のエサ子さんは怖い。
フレンドファイヤがアリっていうRPGで、彼女の異名は『鬼畜』。
大振りする武器を好んで扱うから流れ弾が半端ない。
それでも彼女と組みたがるM気質のプレイヤーが後を絶たない。
たぶん、病気だと思うわ。
どっちも。
アーサー卿を背負うかたちのガウェイン卿。
咄嗟に蔵出ししたエピック級の巨大楯の特殊効果――強制貫通封じ。
これをも上塗りしてくるHP抜き。
エサ子さんのチート能力は確率によるクリティカルなわけだけども。
まさか...
「武器攻撃ぢゃない?!」
大戦斧での攻撃はしている。
ただしインパクトの寸前に片手で振り抜き、空いた片腕で打撃という器用なことをしてた。
盾の判定は強制貫通封じ。
攻撃スキルによる1回目を完全に防ぐ効果がある。
じゃ、2回目は。
貫通効果のある攻撃で連撃も、同一武器によるから1回目としてカウントされるけど。
エサ子さんのは1ターン内で別の攻撃を挟み込んでいる。
両手もち武器を片手で扱う腕力も異常なんだろうけども。
攻撃アクションで、アーツスキルがそれぞれ別に発動させてるセンスも、か。
「拳がダメなら足で蹴る。足でダメなら腰、ボディバッシュがダメなら...頭突き!!」
幼女のような体躯が。
膝を突いたガウェイン卿と、
その背に伸びている騎士王を前にして、なんと大きなことか。
あ、終わったと。
誰しもが瞼を閉じた頃、
「頑丈なガウェイン卿に免じて、ポンコツな騎士王は赦してあげよう! ボクって慈愛に満ちてるから、後でマルちゃんに褒めて貰うんだ。だから、ガウェイン卿は、スタン効果がキレたら、そこの騎士王を監房に運んでおいてね」
ハナちゃんが尋問するからと。
赦されたというか、ハナさんからのステイが聞こえたのだろう。
先ずは捕縛で。
それから尋問、時々拷問を交えて、尋問して。
事情に納得したら勧誘に肉の盾にする。
これが『赤いカエデ』のスカウト方法だ。
ノラの場合に限られている。
騎士王の前に、
戦災孤児だった子が、スープ皿に水を注いで足元に置いて――退散した。
扉の影からチラチラ覗いてた。
やや気になる子だ。