- C 1186話 騎士王、奔る 1 -
モルゴースさんの焚きつけにより、騎士王は列車から飛び降りてた。
給金を貰わずにこう、貨車に間借りしてたフレームと共に、だ。
まあ、ひらりと出た分けじゃないし。
方々に迷惑もかけて。
たぶん、アレ。
警備兵に見つかったら、ひと悶着でも起こしそうな予感の出奔。
「忙しいヤツだなあ」
グィネヴィアさんが酒瓶片手に、座った目で車窓を睨んでた。
◇
騎士王の目的は明確だ。
ガウェイン卿との合流。
エルフの王国を探すとしても、単身では身が持たない。
戦力は多い方がいい。
《赤いカエデも巻き込むか?》
躊躇なく他人も戦力計算する潔さには驚きだけど。
当然、反発される未来も見える。
浅からぬ仲で、知らない間でもない。
リサーチは済ませてある。
《フルスペックではないようだが、ハナが居れば、まあ問題なかろう》
何が。
ほどなくして。
ギルドに寄って、偽名でクエストが赤いカエデに届くよう発注しておいて。
指定地域に誘い出したまでが王の策。
どこがポンコツだって話だけども、大剣の切っ先を大地に突き立て。
仁王立ちで彼女らを待ち構えてた。
「さあ、王国を探すぞ!!」
啖呵を切ってた。
◇
陸上戦艦から湧く人影。
《ほう、素晴らしいじゃないか》
「我が陣営は!」
「いやいや、誰だよ」
大戦斧を担ぐエサ子さんが相手する。
こと白兵戦においての彼女は、鬼畜だという噂がある。
いや、マルのお墨付きか。
「ふふふ」
「アーサー卿?!」
大柄の影が湧いたとこで、そんな悲鳴めいた声が挙がった。
悲鳴だったと思う。
「我が名を口にするは何者」
わたしですよ、わたし、ガウェインですって名乗りを挙げてるのに無視する騎士王。
「如何にも我が名は、アーサー・ペンドラゴン!!! 円卓の王にして汝らの主人である」
何かヤバイのでもキメ来たのか。
ロールが板についてるというか。
「殴っていいか、コレ?」
エサ子さんから糸の切れる音がした。
強化外骨格の召喚と共に、彼女は騎士王を襲う。
はっきりとした敵対行動で、反逆の意志。
「うむ、よい踏み込みだ!!」
言葉と現実がマッチしてない。
騎士王は吹き飛ばされ、膝までついて――HPにダメージが入ってた。
ああ、クリーンヒットしたんか。
「あ、あれ? えっと、ちょ、ちょっと待て」
慌てる騎士王。
遮るは、エサ子さんの嘶き。
モーって叫んでるのかな?