- C 1182話 エルフの王国 2 -
作戦会議は、だね。
交易都市らしい中立の冒険者御用達宿へ。
施設の大半が人類サイドとは無関係の利権によって動いている。
いわゆる交易都市のサービス事業なのだ。
なので、基本の価格設定は。
高山価格みたいなものだ。
ホテルの1階ラウンジで受けるサービスと。
ホテル最上階ラウンジで受けるものとは、まるで別物のようなつくり。
もはやこんな表現が似合う。
水1杯で、銅貨2枚飛ぶ。
そこらで湧水がある。
汲めば1杯、タダのような気がする。
「そりゃ、ムリ筋のムリだよ」
と、マルの副官が、わたしの鼻先を指で弾いていく。
くぅー。
「野宿する時に呑んでる水は、危険性が無いよう。実のところ一旦、煮沸消毒してる」
だれが?
「傭兵団らで、気づけ!!」
叩かれる事じゃないが、手癖の悪い人たちの典型だ。
叩かれた。
痛い訳じゃないが、勘には触る。
「この島の状況を見る限りは富士山やら火山もち地域特有の、天然ろ過装置くらいはあるだろう。だが、しかし、濾されて水はキレイな透明度を保っているかもだが生水は怖い。どんな状態でも煮沸消毒は欠かさないんだよ。いや、欠かせない」
そうした手間を加えて提供される。
冒険者宿のサービスも同じだという。
うん、まあ、何となく理解はした。
納得はいかない。
◇
会議は踊る――ほどでも無かった。
マルが戦鬼さんに玩具にされてた。
傍から見たらちょっと危ない角度のようで。
男性4人に弄ばれる少女。
おいおい。
副官さんも女の子だから、か。
ブチ切れてるのが見て分かるんだけど、これ遊ばれてるな。
そこで頼りになったのが大陸の人たち。
参加してるチームの隊長さんらは少し、遠慮してたんだ。
事情が事情だったから。
みんなお揃いのワタリガラスのコスチュームを着ている、ゲーム仲間ってイメージが崩れないように。
『悪ノリしているガキどもに、いつまで付き合ってやればいいんだ?!』
ドスの効いた言い回し。
低い声がマスク越しにくぐもって聞こえる。
背筋に走る寒気。
戦鬼の腕の中から、マルが抜け出した。
『な、なあ、小鬼...いや、十蔵君』
言い換えた!?
強面の東洋系なおっさんだった傭兵上がりが、言い換えた...だと。
設定には関わらない人だと思ったのに。
わたしの先入観というか、第一印象。
このひと左の首と、右の頬にナイフの傷跡がある。
抉れてて――
『俺たちの行動指針だ!! 餓鬼らには関係ないんじゃないか!!』
こう、低いボイストーンで「遊戯じゃねーんだよ!!!」ってハードボイルドにいうとこ。
そこが、今!!!
「天しゃん、そういう声がお好み?」
蒼が湧く。
そのうち、わたしのコクーンに忍び込んできそうな予感があるな。
「まあ、嫌いじゃないね。家族に飢えてるんで」