- C 1181話 エルフの王国 1 -
『さて...先ずは、メシすっか』
戦鬼さんがマルのセリフに被せるように。
いあ、まんま被せちゃってマルがリーダーらしく切り出す、一番いい見せ場を根こそぎ。
怒ってる、怒ってる。
『なんでコイツ、俺に絡んでくるんだよ?!』
無自覚は怖いねえ。
いるよね、こういうの。
「邪険に扱うと十蔵君、泣くから殴られおやりなさい」
ハスキーなお姉さん。
それぞれ戦鬼の肩を叩くカブトムシにオクトパス。
よく見なくとも、やっぱり“愉快な動物園”にしか見えないんだよなあ。
さてさて。
わたし達一行と、戦鬼さんの臨時パーティは交易都市“ヘスペリデス”の軽い道案内に。
なんで観光してるんだろうって流れに。
「なんで観光に?!」
「そうだ、メシは?」
まあ、こういう風に声は次々に挙がる。
わたし達の一群れって、多国籍なんだけども。
AIによる自動翻訳なのか。
この世界の中では一つの共通した言語に聞き取れた――それぞれの耳で聞く母国語へ。
最初は違和感はなかったけど。
蒼が気が付いた。
「蒼は今、何語で会話してるんですか?!」
そうやって。
先ず、メシだー! フロだー! 寝床は何処だー! 野宿かー! ってな流れがブツっと音が聞こえるように切れた感じがして。戦鬼こと公爵1129にマルこと、十蔵君が険しい表情に。
『「そりゃま、英語だろ?!」』
ふたりがハモるように告げる。
あ、マル、英語だったんだ。
◇
ボイチャだぞって声。
国連軍の愉快な仲間たちも同行している状況で。
世界共通語を使わない理由もなく。
「蒼は英語、からっきしです」
ほあ?
わたしのあたし部位から声が出た。
「天ちゃんは器用だなあ」
バカ、マル。
身バレする。
「ああ、そうか。気にしてなかったけど。ゲーム内でも自動翻訳されてんだな、コレ」
くそ、バイリンガルな子だなあ。
さらっと喋れますよアピールしやがって。
マルのくせに。
っていう心の卑しさは、
態度にも顔にも出るようで。
「天しゃん、眉間にシワよくないです」
メガネっ子の蒼がデコに指をあてて促してくる。
それでもって――
わたしに近寄って。
おおっと、近い、ちかい...
鼻息荒いな、どったの蒼さん?!
「蒼が眉間のシワを取りますね」
で顔をあたしに埋めてた。
それがしたかったんかーい。
「はいはい、この子らは平常運転にもどったようだね」
『アレが正解なのか!!!』
破廉恥なって声は聞こえてるからな。
ひと通り、今晩のおかずの提供をした「わたしら」をしり目に。
再び、今後の方針へ。
なぜかだが。
いや不思議にも感じる。
「なぜ、戦鬼も混ざる?」
方針会議にだ。
交易都市までの道案内クエストは終了したはずだ。
メシ代も奢ったし、あとは、何だ?! わたしと蒼の乳繰り合わいも見せた、あと何が必要なんだ。
『んー、そうだな。面白そうだから、か』