- C 1180話 ポンコツ騎士王と装甲列車 5 -
「凶悪なエルフについてですが」
今のところ確認されているのは、赤のカエデが捕まえた者と。
装甲列車を襲撃してきた者たちに。
農民プレイのクランが経営している農場に特攻してきた者たちくらいで。
どうも急に増殖したかのような流れだ。
「確かに増えてる印象よね? つい30日前の3人組のエルフが出たけど」
小首をかしげる。
噂は聞いてた。
地方のセーフエリアの酒場でも、そうした噂は肴としてあがってたものだ。
だが、ぴたりと聞かなくなって。
代わりのように完全に別物のような種のエルフが出た。
「さすがにダークエルフなんてどれも一緒ですよね」
個性無く金太郎あめのごとく。
いや否だ、それは否だよ。
◇
ひと月まえの3人組のダークエルフは凶悪ではなく、恐怖そのものだった。
お気持ちが斜めな様子だと、目につく動くものすべてを焼き払い。破壊し、ストームかサイクロンかって具合に、ディザスターな損害を押し付けていった。
で、これの噂がぴたりと止んだ。
ちょうど。
ひと月前のことなのだ。
世代でも代わったかのように。
やや集団で凶悪なエルフが湧き始めた。
基本の3人一組、スリーマンセル。
うん、強化外骨格が最大の戦力だとすると、この3人で分隊か小隊規模となる。
モルゴースさんはルームシューズをその場で脱いで。
椅子の上で胡坐をかいた。
品があると、やや下品な仕草も艶がある。
「――3人一組、それ、もうフォーメーションよね?」
そうだね。
全方位索敵しながらで火力が集中しやすい陣形。
最小単位の方陣に円陣でもある。
で、確認されたのが6ないし、9組。
「赤いカエデが捕まえたのって?」
「3人くらいですかね」
公式の記録では、4人或いは、6人は取り逃したかもという報告付で。
負傷者含め約3人だ。
「スリーマンでいえばこの時点で3組存在するのよね?!」
重要な情報は尋問中とのことでギルドには『捕縛』のみが瓦版を賑わせてた。
やっぱりカエデは凄ぇーぜとか。
そういう賞賛が、PKクランから挙がったという。
ハナさんと、ニッチなニーズのウナさんのふたりを推して。
俺たちの姐さん方は最強なんだよ――てな盛り上がりだったのは内緒。
「彼女らの功績により、ヤバいのが未だ複数存在することが... ま、露見した訳よね」
情報通ともいうべき攻略サイトの運営者と、攻略に躍起のクランには知れ渡った感じ。
警戒すべきは突発イベントの他に、ウザ絡みしてくるNPCども、と。
いや、そいつらはNPCか?って意見もアンダーなサイトで出回り始めてた。
「エルフの国、あると思わないかしら?」
女史の言葉に眉をひそめるアーサー卿。
ダークエルフはモブというのが一貫した共通認識。
しかしエネミーの強化外骨格も、ダークエルフが操縦している。
時々ネームドっつう、エリアボスみたいなもあって。
半端な強さだったりした。
今のところタイムアタックで討伐できているのは、聖櫃のみである。
「敵対している王国ってのが、ソレですかね」
にしても3人一組のバカげた戦力があるなら、パワーバランスは崩壊している。
何らかの修正に入るほどにガタガタの状況だ。
「ほら、アーサー君は調べたくなったんじゃない?」
ああー。
疼く攻略魂に灯が。