- C 1177話 ポンコツ騎士王と装甲列車 2 -
10分が経過する。
激しく揺れ始めて、急に列車が速度を落とした感覚があった。
直線が長く続くようならば速度は落とさないだろう。
この先に起伏があるか、カーブがあるか。
「良くないな、守備側が押されてる」
敵の主力が列車の頭を抑えにかかって、急ブレーキが踏まれた。
脱線を恐れたからだが。
「その戦況が見れるなら」
「動けないよ。戦闘員として雇われたわけじゃないから」
傭兵の雇用はない。
あくまでも身を護るための列車側からの温情というだけで。
レイドに列車の従業員から参加したら、パワーバランスが崩れてしまう。
そもそも参加もすでに締め切られたものだし。
これはもう秩序なき横槍と言うのものだ。
「それはまあ、なんだ。難儀だな、聖櫃騎士団で一番の戦力の騎士王が戦場に出ないってのも、それを知ってる身からすると。どうにも歯痒くてならない」
アーサー卿はコロコロと微笑む。
「理性なき最高戦力と言えば、騎士団最強は“ガウェイン卿”だろ。あの先生、見境なく死地に飛び込んでいくから回復士の総長が嘆いてたじゃないか」
鳥の頭が揺れて、トリスタン卿が頷きながら。
「その彼女の手を引いて出て行ったのは君だよ」
騎士団の戦力は以前の4割近く減少している。
その原因を今一度、深く、深ーく捻じ込んだ。
「案外、根に持つのな?」
「だからこうして... 帰る気は無いのかって勧誘しに来ただろ?」
◇
装甲列車の一部が脱落した。
後方の貨物車5両の損失――守備側の辛勝といった形に幕を閉じるのだけど。
この戦いに例の『凶悪なエルフ』が混じってた事が明るみになる。
指揮官プレイヤーが、参加した各人を健闘するために敢えて暴露したような形で知れ渡った。
賢いAIでも組み込まれてるのかって話題になり。
対峙した誰もが『NPCだろ?!』とは思わなかったという。
装甲駅舎“ネイメーヘン”。
停車駅の一つで、唯一の安全地帯。
この周辺は穀倉地帯として認知されて、両陣営の国力バランスを担ってる。
下車する乗客は少ないけども。
現地人である獣人たちが、開拓最大版図“ニュールブリン”を目指すときに利用してた。
「ここの特産は、イネ科の穀物類だ!!」
アーサー卿が賄い飯を用意した。
食堂車に移動すればもう少しまともな飯が出る、有料だけども。
「これも獲るのか、カネを?」
んにゃって答えて。
女性客に向けてたイケメンの微笑みで、
「友達からのプレゼントだ。他意は無いし、ひとつ細やかなお願いだけがあってね」
列車の有料サービスを受けて行ってくれというもの。
まあ、これで騎士団に帰った時。
サービスを受ける客の開拓を頼まれた。