- C 1171話 円卓とポンコツ騎士王 1 -
戦災孤児の少女は、バイリンガルだった。
「おバカなこと言うんじゃないよ」
農民クラン『森の習さんさん』の小父さま。
頭一つ上から言葉降ってくる感覚だけど。
マジか、ハナさんよりも長身とは。
彼女でも見上げるもんがあるんだ。
「こんな言葉にもなってない言語があるもんかね」
とはいえ。
意思の疎通のようなものが出来ている。
「うんと、うんとね。みんなの好奇な目に耐えられないって」
と、そういう会話なのか不明だけど。
捕まったグレイ宇宙人めいた挙動であるのは確かな感じ。
大人しくあろうとはしてるし。
時々癇癪を起こしてるような雰囲気もある。
「じゃ、このプンスカしてるのは?」
ウナさんが少女に問う。
ひと呼吸待ったとこで、
「踏んでるだって」
「なにを?」
「足を」
おっと。
だらんと伸ばした足を、うん。
確かに踏んでました、ごめんなさい。
◆
ダークエルフの居留地へ向かった賞金首たち。
このクモ型フレームは、原住民たちの好意により与えられたもの。
動力源を含めて、消耗するであろう資源の殆どがよくわかっていない。
ただ、操縦席にある者、砲座に滑り込んだ者は何となくだが、何かを吸われた気配があった。
『それは魔力だよ、外から来た者たちよ』
いくつかあるエルフ村の村長さん。
人種族が開拓地だと呼ぶエリアに近い場所にある最初の陣地。
人類が海岸線を切り開いているのとは対照的に。
こうした前哨基地のような村が、いくつも用意され――
適度なちょっかいと。
嫌がらせを実行しながら、エルフ達は100年という期間で戦争を俯瞰してた。
「仲間の足が!!」
村人たちが総出で、負傷した傭兵を支える。
教会の中が急遽、野戦病院化して。
神父は祝祷をはじめてた。
『大半の魔法、いや魔法使いたちは中央の正規軍に属するよう、発令が出ておってな。こういう村には教会から派遣された、神父や修道女しかおらんのだ』
と、村長が首を振る。
深刻な状況だと察した。
その神父も、祈る最中で――
『この村は神父と助手が2名いて幸運なんですよ!!』
他の村はもっと悲惨だ。
戦争は長すぎた。
ダークエルフも長命種だから、個体が急に増えることはない。
この数百年で、見知った氏族の大半から名を知らぬ氏族がごっそり入れ替わってた。
環境適応って言葉通り絶滅の危機に陥った時。
亜人でも種の存続に一縷を望む。
繋げようとして、彼らも変わったという。
『うむ、治癒の加護は得られた。欠損部位の修繕は『魔法』にすがる他ないが。命の水という回復水溶剤でもあればもう少し楽なのだが』
祝祷にも限界があるという。
『ところで、この下腹部の傷じゃが?!』
村長が見つけた傷。
跳弾の痕跡だろう。
『狙ったのならば、手練れじゃな?!』