- C 1170話 奇襲と戦災孤児 4 -
農場を荒らしまわるエルフたち。
広大なマップとは言え、双眼鏡越しに1000メートルに達する距離は薄らぼやけた視界になる。
凹凸の激しい島の海岸線から、内側へ数十キロメートルまでが人類に赦された活動限界点。
より海岸線にちかい農場にまで進出してきた賞金首たち。
軽い雷鳴のような音が響いた。
クモ型の上で、索敵してた兵士の顎上がフレッシュトマト並みに弾け飛ぶ。
『敵襲! 敵襲だ野郎ども!!!』
クモの腹の下へ逃げ込み、脚を背に周辺警戒へ移行。
早いねえ~
この一寸が経験かな。
◇
「ひとりを始末した。位置バレしたっぽいから移動する、援護、頼む」
赤いカエデは、小隊ごとに分散して行動してた。
適当な高所がなかったから茂った樹上八分目あたりに陣地を作ったんだけど。
双眼鏡で睨みを利かせてた観測兵に目撃されたので、仕方なく狙撃した。
「ウナちゃん?」
「ああ、今、調整中。跳弾でいいなら警告射撃はできるけど?」
リーパーの別の組と狙撃位置に向かってると明かす。
「お願いします」
「あいよ」
クモ型による砲撃と共に、低い雷鳴が響き渡った。
クモの真下にある連中には聞こえなかったし、足元の連中からは『うるせえ!』って怒鳴り声。
と、同時に『ぐぁっ』って悲鳴が。
クモの腹底に当たった銃弾が跳ねて、フレームの脚の関節にでも跳ね、変則的な回転のままエルフのひざ下を抉っていった。
入射痕もえぐいけども、射出痕はもっとひどい。
「くそ、応急処置しか出来ない」
ひざ下がぐちゃぐちゃだって声が飛ぶ。
「フレームの中に収容したいが」
腹の中央に脱出用のハッチがある。
逆にそこから搬入できれば、けが人の回収も容易だが。
「言うて、回収できる人員は4人くらいだが」
このチームリーダーは即断する。
『クモの下に戻れなかった者は援護を』
チームリーダーの選別は、けが人と搬送にふたり、副官の4人。
「リーダー!?」
『俺は残る、ツケは払っといてやるから。仇を頼む』
交信は以後、届かなくなる。
腹のソコを叩く音。
ハッチからゾロっと4人が滑り込んで、再び固く閉じられた。
◇
――奇襲は成功した。
スラヴ語のような不明瞭な言語を使うエルフが捕縛され。
赤いカエデによって拘束された。
「やっぱり何言ってるか理解できないや」
ウナさんは翻訳機を片手に匙を投げる。
戦災孤児とともにエサ子さんも――「ん、とね。この人たち、エルフってトラックか何かの名前かって? 疑問に思ってるみたい」と、エサ子さんの義妹が応えてた。
え?!