- C 1168話 奇襲と戦災孤児 2 -
幼女ふたり分の世話をするのが、必然的にウナさんだけになる。
ウナさんしかいないので――必然的にってなる。
「解せぬ~ぅ」
どこかで聞いたセリフのような気がするけど。
難しそうな顔をしながら。
ボウル抱え込んで、しゃもじでガシガシかき混ぜてる姿。
小麦粉と卵6個、牛乳が入った生地を捏ねてるわけだが――
何か作ろうとしていることは明白なんだけど。
「解せぬ~ぅ」
もう、口癖なんじゃなかろうか。
◇
ハナさんは、戦艦に備わっているブリーフィングルームにあった。
今後の方針を詰めるためだ。
最初の指針は、マルたちと合流する。
この点が第一、次に違和感の再確認だったんだけど、根底から崩れた。
合流が困難になった。
コクーンの外では頻繁に意見交流が出来ている。
国連軍ともパイプはあるけど、信じて貰えないので結果的に今、プログラムに参加している有志国のみという至って狭い情報共有だ。
「はい!」
手が挙がる、パンダみたいなスキンの方。
お国柄が分かるような種族や、スキンを用意して貰った。
赤いカエデに集まってるのは、今やリーパーだけではないので。
国境の街“ライン・オブ・デス”から動かなかったのは、こういう事情だからだ。
「例の戦闘妖精ですが、どこの者です?」
プログラムに参加している有志国は、生身で行かなかった分、意思の疎通がレイヤーの外で取れているので除外されてある。
国連軍のいずれかの国となるんだけど。
「たぶん、ベルゴロドの傭兵かな? 傭兵ビジネスも盛んなもんだから、民兵に毛の生えたのも沢山あって、これってキメ打ちできないのが厄介だけど。スラヴ語を発しながら叫んでたんで、わんちゃん」
パンダから引き攣った表情が浮かぶ。
おお、このスキン表情筋が豊かだ。
スラブ語圏は広い。
ただ、国連からの『最後のフロンティアに最初の一歩を!!』なんてプログラムに参加できた国は、そう多くはない。
最初の一歩が一番、多くの犠牲を出す。
多少の利益減が出ても安全に、確実に利益が出るよう小国なりのそろばんは持っている。
そうなると。
スラヴ語圏の参加国は絞られるので。
例の大国が浮かんでくるわけだ。
「――っ、島へのアプローチと、ゲーム内表記の何が作用しているかは不明だけど。国連軍は、ダークエルフ...島の原住民と認識された。マルたちからもひとつ、情報があって『プレイヤーと接触出来たという』(ルーム内にひどく重い空気が流れ)こちらは今のところ概ね良好な関係が築けているとのことで――」
安堵かな。
重たかった空気が晴れた気がする。
張り詰めてたんだな、きっと。
悪い事ばかりじゃないと。
「じゃあ、合流」
「いや、今は無理だと思う。君たちも、仲間からスキンの話は聞いてると思う?」
参加チームごとに、ゲーム内とゲーム外に分かれてて。
接触が試みられた。
実際に一部は遭遇して、抗争になりかけたって話もある。
「総意で、交易都市へ向かった。回収は諦めて、こちらも独自の調査になると思う」
先ずは。