- C 1163話 交易都市と傭兵 3 -
アヴァロン・クエストに参加しているマルと、プライベートのマルとで境界めいたものを設けている。
仕事中のは『ストーン・ゴーレム』の着ぐるみと共に、専用の強化外骨格がスポンサーから用意されている。
マルの要望としては、ゴーレムがゴーレムを操縦しているように見える?イメージが草案だったようだけども、受け入れられずに武骨で素っ気ないもんが出来上がった。愛着が湧かないとストレスになるので、チャームという飾りスキンを運営から用意してもらい。
ゴーレムの頭上にマルが載っている。
そんな風に見える小物だ。
配信を見ている女子には人気があるんだけど。
ヤってる本人は妥協なので、ね。
ちょっとこじらせてるとこがある。
それでも使いこなさないと。
かっこのつけようも無いと。
で。
趣味で作ったアバターは、十蔵という。
まるっきり他人さまなキャラネーム。
半ズボンに、ハイソックスで、ノースリーブなシャツの似合う角刈りの少年。
十蔵は、中性的な要素を排除した昭和の男子にした。
ただし、中身がマルなので。
魂に肉体は引っ張られるのかもしれない。
徹底的に排除したのに。
なぜか、エロいんだよなあ。
この十蔵くんは。
◇
さて、捕捉された相手だが。
先のマルの知り合いってことになる。
「戦鬼だ。紹介はこのくらいでいいか?」
マルの口調が明らかに男子っぽい。
いや、正確には小・中学生の男の子みたいな口調だ。
まー。
兄貴が居ない家庭だ、そーなるわな。
配信者マル・コメのウケがいいのは、弟感だ。
世の人々は思う、
この子を守ってあげなくては――と。
戦鬼に楯突くように見える関係も。
傍から見ると、
「まるで兄弟のようですね」
副官が感じるのだ。
隊員だってそう見える。
鬼のような教官の面や、JKヤってる時の雰囲気もない。
こう、コロコロとした可愛い生き物感がそこにあって。
中性さを排除したと豪語したわりに、なんかエロくなった子がここにある。
「兄弟ちゃうわ!! あ、こら! シリ、触るな!!!!」
構うと脊髄反射してくれるとこが可愛い。
わかる。
蒼もマルを使って遊んでる時がある。
「ちょ、落ち着いて。十蔵くん」
わたしが二人を静止させた。
こんなジャングルの中で、じゃれ会う二人に対して。
今のこのシチュエーションは不自然じゃないだろうか。
「うん、そうだな。不自然だな、十蔵。おまえ、こんなにお友達いたんか?!」
そこか。
そこなのか。
「と、とも?! ああ、ま、まあな」
動揺が言葉に乗った感じだけど。
マルの可愛さに場が流された感じがある。
◇
十蔵のいや、戦鬼がソレと気が付けた理由は、スキンだ。
わたしたちがマルと同類、同族であると自他ともに認識しやすいように。
同じスキンを用意した。
オリジナルのフレーム・アーマーは重課金でも“運”が必要だと揶揄されたけど。
眷属のワタリガラスは、排出率80%のレア・アイテムだった。
もっとも課金ガチャを回さない限りは手に入れられないので。
廃課金と知られている十蔵の友ともなれば。
「頭から足まで全部、ワタリガラスとか。なるほど、十蔵のお友達だよな」
どんな感心だよ。