- C 1162話 交易都市と傭兵 2 -
攻略サイトに記された手順で、交易都市を探す。
“王国兵”という称号さえ得られれば、自ずと開かれる道のりなだけに。
少し遠回りのような。
いや。
急がば回れという言葉もある。
無理を重ねれば、ツタの餌食になる――MPKの生き残りを引きずってるダークエルフ一行。
とは見た目の話で。
これは、わたしたちの事だ。
さて、
蒼が目覚めたのか。
或いは壮大な実験なのか。
ツタを引きちぎって、生存者に緊縛させてて。
「それ、なに?」
わたしも恐る恐る聞いたものよ。
「今ね、着衣緊縛・飾り縄に挑戦中!!」
ちゃ、着衣?!
完成予想図の走り書きイラストが手渡される。
だから、その知識は一体、何処から。
胸周りの縄は――女性なら、バストの輪郭に沿って強調しながら輪っかにする。
対象が男性だと。
貧相な輪ですなあ...
「天しゃんだと立派に縛れると思う」
いあ、いいです。
興味ないんで。
“飾り縄”というだけあって、広い面積には編み込んだ図形、模様の数々。
蒼曰く『縄は芸術なんだよ』と。
緊縛術とか、なんかそんなワードで検索すると。
アンダーなサイトに辿り着くのはR15指定でも赦されるのか?と。
ま、
しかしだ。
不覚にもだが、わたし。
ふつくしいと...感じてしまってた――勿論、蒼の手で天井から吊るされながら絞められる妄想が...
「ふふ~ん、きましたね! 天しゃんもビビッと来た感じですか?!」
こういう時の勘の鋭さは、イラっと来る。
蒼のくせにぃ~
◇
マルが片手を挙げた。
静止の合図。
もって、その場で皆が膝を突いてしゃがみ込む。
わたしら二人も20秒遅れて座った。
「指示したら、迷わず周りと同調してくんないかな?」
マルの副官にして、八ッ橋家のメイドさん。
前にエリザさんの部屋で見かけた人だ。
ガッコに通わずに就職したので、同い年でもちょっと大人な女性に見える雰囲気。
これが社会の荒波に、胸を揉みしだかれるってヤツですね!!!
「胸は揉まれない、タコの滑りを落とすような感覚ですよ、洗濯機で」
らしい。
「ねえ、もういい?」
マルが待ってた。
副官とわたしのジャレを邪魔しないでくれてた。
「今、身を屈ませたのはボクが危険を感じたからなんだけど。たった今、その危険と思った対象に...君たちのせいで知覚されました。遭遇までまもなくです」
1、
2、
3...
はい、ここ。
『お!、十蔵じゃねえか!!!』
くぐもった声。
やや陽気で、軽薄そうにも感じられる。
見上げると。
「うっわ、戦鬼だ」
どうも、マルとは顔見知りだった模様。
強化外骨格に見えるよう、スキンを掛けてたのが幸いした。
あのままダークエルフでも良かったかもしれないけども、仮に氏族の違う者は『敵!』とか認定されると厄介だ。
情報収集も出来ないで詰む可能性もある。
だから、マルの指示の下。
しゃがんだ一寸で、スキンを発動させた。
これは効果、てきめんか?!!